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アーセナルOB「トミはファンのハートを鷲掴みに」 冨安健洋22歳、スタンディングオベーションも当然な「4つの好プレー」《現地レポート》
text by
田嶋コウスケKosuke Tajima
photograph byREX/AFLO
posted2021/09/13 17:03
エミレーツスタジアムのピッチに立った冨安健洋。デビュー戦にしてすでに主力の風格があった
タッチライン際の“大外”からの攻撃参加だけでなく、その内側のレーン、つまり相手のSBとCBの間にあるスペースへ斜めに走り込むことで、敵の守備陣を大いに混乱させた。前半5分に放ったミドルシュートや、後半7分に自身のパスカットから好機を呼び込もうとした場面も、いずれも冨安のダイアゴナルランが起点だった。
アーセナルにいる右SB陣(カラム・チェンバーズ、セドリク・ソアレス、エインズリー・メイトランド・ナイルズ)は、こうした気の利いた攻撃参加を見せることはない。この点でも、冨安は新しい風を吹き込んだ。開幕から3連敗を喫していたアーセナルはここまで攻撃が極めて単調だったが、冨安の積極的な攻撃参加とクレバーな動きでアタックに勢いと奥行きが生まれた。
合流2日ながら、周囲の選手にも積極的に指示を
チームに合流して2日しか経っていないにもかかわらず、周囲の選手に積極的に指示を出していたのも好印象だった。攻撃参加の際に自分の欲しいタイミングでパスが出てこないと、出し手に「ここにパスを」とジェスチャーと声で強く求めた。
ハーフタイム時には、CBのガブリエウを捕まえて意見交換。試合中もベン・ホワイト、ガブリエウのCBコンビに指示を出していた。アルテタ監督は冨安について「良いエネルギーを感じる」と話していたが、その言葉通りのポジティブなアクションだった。
同時に、落ち着いた守備で、最終ラインに安定感をもたらした。プレミア初出場の22歳DFとは思えないほど守備対応で慌てるシーンがほとんどなく、周囲の状況を正確に把握する姿にはベテランの風格さえ感じた。
エミレーツスタジアムが沸いた前半10分のプレーとは
場内が大きく沸いたのが、自身の背後に抜けた相手ウインガーを自慢のスピードで追いつき、敵のチャンスを潰した前半10分のシーンである。
対峙したギリシャ代表FWフリストス・ツォリスがボールを受けた際は2~3メートル近く離されていたが、冨安は猛ダッシュで追いついた。その後も時間を稼いで味方の戻りを待ち、周囲との連携で敵の攻撃を潰すという冷静さも見せた。