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「挑戦を終わらせる覚悟がない」岡崎慎司35歳がスペイン2部・カルタヘナに移籍した“本当の理由”「佐藤由紀彦さんに憧れて…」
posted2021/09/13 17:20
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph by
Getty Images
9月12日スペインリーグ2部第5節。レアル・オビエダに2点のリードを許したカルタヘナは、後半24分、加入したばかりの岡崎慎司をピッチへ送り出した。しかし、スコアが動くことなく試合は終了。華々しいデビューとはならなかったが、これもまた彼らしいとスタートと思える。
酒井宏樹(浦和レッズ)、武藤嘉紀や大迫勇也(ともにヴィッセル神戸)、乾貴士(セレッソ大阪)、そして長友佑都(FC東京)と日本代表でともに戦った選手たちがJリーグ復帰を果たすなか、岡崎は欧州に踏みとどまることができた。
今夏はコロナ禍により、欧州の移籍マーケットが冷え込んだ。昨季限りでウエスカを退団した岡崎にとって、この夏は過去に経験のない夏となっただろう。移籍市場が閉まる8月31日にカルタヘナと契約し、なんとか滑り込んだ。
「自分を欲してくれるところがあるというのを聞いて、すぐにOKしました。個人的にもヨーロッパでもう1回這い上がりたいという気持ちが残っているので、迷うことはなかった。新しいチャレンジができることが本当に嬉しいです」
喜びを口にしたのは岡崎だけではない。
「カルタヘナにとって、岡崎のような選手がいることは贅沢なこと。3度のワールドカップとプレミアリーグで活躍した素晴らしい記録を持っている。私たちに多くの喜びを与えてくれると確信している」
カタルヘナは昨季2部に昇格したばかりのクラブ。日常的に外国人選手をリサーチすることは少ない。だからこそ、結ばれた縁への感謝を両者が口にするのだろう。
オフのJクラブでの調整を“封印”する理由
昨シーズン終了後、日本へ戻った岡崎は自主隔離期間が終わるとさっそく練習を始めている。7月に入ると欧州の新シーズンへ向けたキャンプが始まる。所属先がいつ決まってもいいようにという想いがあった。トレーナーの元でのフィジカルトレーニング以外は、自身でメニューを考えた。「あんなにシュート練習をしたのは、本当に久しぶりだった」。
身体をはじめ、自身を見つめなおし、自分のペースで鍛えなおす「自主練」は、結果的に2カ月以上も続くことになる。自身が理事を務めているクラブFC BASARA HYOGOや出身校である滝川二高などを拠点に行ったトレーニング。子どもたちや高校生とともにすごす時間もあったが、基本的には対人メニューは行っていない。
「生活も含めて、平和な毎日に居心地の良さを感じながらも、このままでよいわけじゃないという焦りは当然あった。やっぱり刺激が足りない。僕の欲しいものがヨーロッパにあるんだと、改めて感じる時間になった」
欧州のクラブに所属する選手が、オフの期間、Jリーグのクラブで調整するケースは少なくない。しかし、岡崎はそれを封印している。
「どこかのチームで練習してしまうと、絶対に楽しく感じるだろうし、その空気に慣れてしまうかもしれない」