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「4位で帰るのが一番ダサいよ」車いすラグビー池透暢が振り返る5日間の激闘…決戦前に開いた恩師からの手紙と亡き友人の写真 

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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posted2021/09/10 11:02

「4位で帰るのが一番ダサいよ」車いすラグビー池透暢が振り返る5日間の激闘…決戦前に開いた恩師からの手紙と亡き友人の写真<Number Web> photograph by Getty Images

2大会連続となる銅メダルに貢献した主将・池透暢。5日間の激闘を振り返ってもらった

 大半の選手がパラリンピック初出場という中で、池が特に気にかけたのが、19歳のハイポインター・橋本勝也だった。

 橋本は池と同じ3.0のハイポインターで世界選手権も経験済み。次世代のエース候補と期待を集める選手ではあったが、パラリンピックは初めて。見るからに緊張していた橋本に、池はこう声をかけた。

「今この状態、この緊張が今後の財産になるから。しっかり記憶しておくといいよ」

 フランス戦の翌日、予選2試合目のデンマーク戦の第4ピリオド終盤で橋本は池に代わって投入された。池は「練習してきたから大丈夫」と送り出したが、頭が真っ白という表情でコートへ向かう橋本の姿が、むしろほほえましかったと回想する。

「周りが見えていなくて、何をしていいかわからないから、とりあえずローポインターを抑えてもう1人の選手を抑える『ローピック』という基本のプレーをしていたんです。ど緊張の中で、まず基本をやらなきゃという一生懸命な姿がなんだか印象的で、逆にこちらの緊張感がほぐれましたね(笑)。たとえ出られる機会が少なかったとしても、それぞれが役割を果たし、全員で勝ちを取りに行った。全員で金メダルを獲りに行くチームにしたかったので、この舞台に立てて嬉しそうにプレーする橋本の姿を見たら、僕も嬉しかったです」

準決勝イギリス戦前夜の「迷い」

 60ー51でデンマークを退けた日本は、予選最終戦でオーストラリアを57ー53で下し、3連勝と波に乗った。だが、決勝進出をかけたイギリスとの準決勝前夜、池にはある迷いが生じていた。

「ここで何か1つアクションを入れたほうがいいのか。それともみんなを信じて、いい状態のまま右肩上がりでもう1つ、次のイギリス戦にもつながると何もせずに行くのか。すごく迷いましたが、心理面のサポートをして下さるスタッフの方にも相談して『このままで行ってみようと思います』と決めたんです」

 実は準決勝の組み合わせが確定した時点で、池は不安を抱いていたという。

「イギリスが一番怖いと思っていたんです。これまでの対戦成績は悪くないし、僕らもここまで3連勝してきた自信がある。考え過ぎなのかなとも思いました。でも試合前のイギリスの選手はアップコートに出て来ず、メインコートへ来た時の表情から、この大会に懸ける思いの強さがにじみ出ていた。秘策を含めた綿密な準備をしてきたんだと感じました」

 池の不安は、最悪の形で的中する。

【次ページ】 「もっと彼らを恐るべきだった」

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