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「4位で帰るのが一番ダサいよ」車いすラグビー池透暢が振り返る5日間の激闘…決戦前に開いた恩師からの手紙と亡き友人の写真
posted2021/09/10 11:02
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Getty Images
うだるような熱風の日々から、気づけば涼風舞う9月も早いもので10日が過ぎた。
2大会連続となるパラリンピックの銅メダルを手に「ありがとう」と伝えたい人たちの顔は代わる代わる浮かんでくるのに、未だ喧噪は収まらず。忙しない日々にもどかしさを抱きながら、車いすラグビー日本代表主将・池透暢(41歳)はあの何とも言えない空気を思い出す。
「初戦でデンマークがオーストラリアに勝った後、パラリンピック独特の嫌な風、嵐の後のような生ぬるい、もわっとした変な空気、雰囲気を感じましたね。これはフランスが日本を食うこともあるぞ、と。始まる前から警戒はしていましたが、それまで以上に初戦がとても大事だとオーストラリアが教えてくれた、という思いでした」
高揚感と独特の緊張感が入り交じるフランスとの初戦を前に、パラリンピック2連覇中で世界ランク1位のオーストラリアが7位のデンマークに敗れた。世界ランキングや過去の対戦成績を見ても、大波乱と言うべき幕開けだった。しかもそれが日本戦の直前。
やはりパラリンピックは何が起こるかわからない。「もわっとした変な雰囲気」の中、車いすラグビー日本代表のパラリンピック、5日間の戦いが幕を開けた。
初戦は逆転勝ち「やるべきことは決まっていた」
程よい緊張感の中、上々のスタートを切った日本だったが、自国開催での金メダル獲得に並々ならぬ意気込みもあり、硬さが生じた。2018年世界選手権を制している開催国に、フランスは1.5のローポインターであるセドリック・ナンカンが攻守の要として奮闘。第4ピリオドに入ってもフランスにリードされる苦しい展開が続いた。
だが、池が得意のロングパスだけでなく、自ら切り込むトライで相手の裏をかき、53ー51で競り勝ち、幸先の良い逆転勝利を収めた。
「戦略のミーティングもしっかりできていて、やるべきことは決まっていた。あとは各々が懸ける舞台へどう臨むか。僕は僕で準備しながら、周りの表情をうかがっていました」