濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
<スターダム>「心の闇を全部刻み込む」悲願の王座奪取、スターライト・キッドが“涙なし”のワケ…リーグ初戦、彩羽匠のオーラもすごかった
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2021/09/04 11:00
ハイスピード選手権でなつぽいに勝利し戴冠を果たしたスターライト・キッド。
「7回も負けてきて…私はこのベルトに対してムカつくよ」
「このベルトへの気持ちは自分が誰よりも強い」とキッドは断言する。フィニッシュ技連発はその象徴だった。「このタイミングで獲ることができたのは、自分が選んだ道(闇堕ち)が間違ってなかった証」だとも。ただベルトを巻いてみると「嬉しいのかどうか、よく分かんないや」という気持ちにもなった。ほしくてほしくて仕方がなかったベルトなのに“涙の戴冠”にはならなかった。それが彼女の変化であり偽らざる心境であり、秀逸な“黒さ”の主張でもあった。
「7回も負けてきて……私はこのベルトに対してムカつくよ。ベルトに対する思いは一番あるのに、ずいぶん時間がかかった。防衛戦では、今まで嫌というほど味わってきた屈辱、心の闇を全部刻み込む。闇のハイスピードベルトに染めてやる」
自分からベルトをはがすには、執念で上回るしかないと語ったキッド。試合後のリング上ではベルトを掲げながらなつぽいの顔を踏みつけ、首を掻き切るパフォーマンスを見せた。彼女はこの試合でベルトを巻くとともに、シングルでメインを張り、観客を満足させる力があることを証明してみせたと言っていい。それはスターダムという団体に、大きな柱が増えたということでもある。
流れの速さは以前からスターダムの魅力だが、リーグ戦の最中でさえそれが止まらない。勝ち点争い、優勝争いがあり、それに加えてタイトル戦線でも激しい闘いが繰り広げられている。それだけどの大会も見逃せないものになるわけだ。