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<スターダム>「心の闇を全部刻み込む」悲願の王座奪取、スターライト・キッドが“涙なし”のワケ…リーグ初戦、彩羽匠のオーラもすごかった
posted2021/09/04 11:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
優れたプロレス団体、その条件の一つは“転んでもタダでは起きない”ことだ。
人気選手が離脱、引退するとすぐに別のスターが台頭したり、マイナスの出来事があっても「結果としてうまくいった」と思わせてくれる団体は強い。ファンが「今回も何かやってくれるんじゃないか」と期待する土壌ができると言えばいいだろうか。
8月、女子プロレス団体スターダムは2週間にわたって興行を開催することができなかった。理由は「新型コロナウイルス感染症の濃厚接触者の判定を受けた選手が複数名いたため、お客様・選手・関係者の安全を考慮し」というもの。この2週間、4興行はいずれも地方開催。県をまたいでの移動だから、余計に慎重にならざるを得なかったのだろう。
“大幅戦力ダウン”でもオール一騎打ち興行は満員に
活動再開は8月28日の名古屋大会から。スターダムは9月下旬まで続く大規模なリーグ戦「5★STAR GP」を開催中で、中止になった4大会分の公式戦を振り分けるなどカードの再編成も行なわれた。当然、1大会あたりのリーグ公式戦が増える。さらに団体は、他の試合もすべてシングルマッチとした。タッグマッチも6人タッグも3WAYもなしで“一騎打ち”がズラリと並ぶ。
やはりシングルマッチは“勝負性”が高いからファンも前のめりになりやすい。8.28名古屋大会、その翌日のベルサール汐留大会ともに「コロナ対策限定人数」の客席配置とはいえ満員になった。ただ全試合シングルマッチといっても、会場使用時間は以前と変わらない。ビッグマッチでなければ、毎回7試合ほどになる。
つまり出場選手が限定されるのだ。8.29汐留大会でいえば、頂点のシングル王座ワールド・オブ・スターダムのベルトを持つ林下詩美、ワンダー・オブ・スターダム王者の中野たむ、タッグ王者の朱里とジュリアが出場していない。普通に考えて“大幅戦力ダウン”なのだが、それでも満員。
それだけ勢いがあり、団体として地力があり、またシングルのみのカード編成に惹かれたファンが多かったということだろう。スターダムは転んでもタダでは起きなかった。