F1ピットストップBACK NUMBER
「それでも、スタートしたのは…」ハミルトンが“金儲け最優先”を痛烈批判 “雨中の強行”2周でレース成立のベルギーGP舞台裏
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2021/09/02 11:02
セーフティカーに先導されたまま、予選順位通りの隊列で合計3周を走ってレース終了。視界の悪さは写真を見ての通りだった
「今回の意思決定に、F1側の商業的理由が影響していたことはまったくない。われわれがコンタクトしていたのはF1ではなく、公式の気象予報士だった。彼らから提供された情報をもとにレースが再開できそうな時間帯があり、そのタイミングでレースを再開させ、コンディション確認したのだが、残念ながらレースを続ける状況ではなかった」(マシ)
確かにFIAは今回、国際スポーティング・コードの「不可抗力」条項を利用して、時計の針を一時停止するなどして、なんとかレースの再開に向けて尽力していたことは事実だ。F1にはレース開始予定時刻から最大3時間というルールがあり、通常であれば、レースは18時に終了する予定となっていたが、FIAはスチュワード(レース審議委員)と協議し、17時の時点でカウントダウンをストップさせ、1時間だけでもファンにレースを届けようと考えていた。
ファン置き去りのFIAの釈明
F1の最高責任者を務めるステファノ・ドメニカリも、ハミルトンの批判を次のように否定した。
「レース運営(FIA)と商業契約(F1)との間に繋がりはまったくない。そもそもスパとの契約内容については、仮にレースが成立していなくとも支払いを受けることが可能な取り決めになっていた。だから、2周消化後にレースを中止したという決断は、金儲けとは何ら関係がない」
さらにドメニカリは、日曜日に雨が降ることは予測できていたのだから、スタート時間を前倒ししたり、月曜日まで延期することはできなかったのかという批判に対しても、冷静にこう答えた。
「たとえ、午前11時にレースをスタートさせていても雨が激しく降っていた可能性がある。月曜日に延期するには、ロジスティック(レース関係者の移動とレース関連部品の物流)的に不可能だった。たとえ、われわれがそれらをクリアしたとしても、サーキット側はマーシャルをもう1日働かせなければならないし、ファンにもう1日とどまってもらうのは現実的ではない」
FIAはルールに従い、F1の契約を履行した。そこに間違いはない。しかし、3時間以上も雨の中で、手に汗握るバトルを期待しながら、それを見ることができずに帰ることになったファンに対して、その理屈は必ずしも通用はしない。
いまF1と主催者はチケットの払い戻しも含め、日曜日にスパに駆けつけたファンに何らかの措置がとれないか検討を始めたという。もし、今後コロナ禍で中止になるグランプリが出てきた場合、その期間を利用してスパに戻り、ファンの前でもう一度走りたいというドライバーたちもいる。そうなれば、ぜひもう一度、筆者もスパを訪れたい。