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ルイス・ハミルトン「どう立ち上がったかが大切なんだ」…“ミスで9番手”からの2位浮上、逆境で見せた「王者の風格」

posted2021/04/23 17:01

 
ルイス・ハミルトン「どう立ち上がったかが大切なんだ」…“ミスで9番手”からの2位浮上、逆境で見せた「王者の風格」<Number Web> photograph by Getty Images

序盤に接触もあった勝者フェルスタッペンを、レース後のコメントでは素直に祝福したハミルトン

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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「久しぶりにミスをしてしまった。僕だって人間だから、あのようなミスをすることもある」

 エミリア・ロマーニャGPで2位でフィニッシュしたルイス・ハミルトン(メルセデス)は、そう言ってレース中に犯したミスを認め、こう続けた。

「レースが進むにつれて、走行ラインは乾き出し、ラインは1本だけになった。そのとき、僕の前にバックマーカーが現れ、彼らを追い越そうと少し焦ってラインを外してしまった。すると、そこは路面が濡れていて、マシンが止まらずにコースアウトし、タイヤバリアに接触してしまった」

 この日のエミリア・ロマーニャGP決勝は、レース直前にコースの半分で雨が降るという難しい路面コンディションでスタートした。そのため、ハミルトン以外のドライバーも不規則に濡れた路面に足をすくわれた。

 レーススタート前のレコノサンスラップ(ピットガレージを出て、ダミーグリッドへ向かうラップ)ではフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)がコースをはみ出していたし、レッドブルのセルジオ・ぺレスやキミ・ライコネン(アルファロメオ)ら多くのドライバーたちがスピンやコースオフ、あるいはクラッシュを起こしていた。

王者らしからぬコースオフと、ミスを受け入れる謙虚さ

 ハミルトンもそのひとり。周回遅れをかわそうとした31周目のコースオフがそうだった。

「正直、コクピットの中で打ちひしがれたよ」(ハミルトン)

 メルセデスのトラックサイドエンジニアリングディレクターを務めるアンドリュー・ショブリンも、その瞬間、終わったとあきらめそうになったという。

「31周目にウイングが壊れてグラベルにはまってしまったルイスを見たとき、だれもがこのレースでタイトル争いトップの座をいったん明け渡すことを覚悟したよ」

 しかし、ハミルトンは自ら犯したミスを受け入れる謙虚さと、そのミスからいかに立ち直るべきかを考える冷静な心を持っていた。

「タイヤバリアに当たっても、まだレースが終わったとは思わなかった。だから、僕はマシンの電源を切ることもなかった。ミスしてしまったという怒りを抑えて、ポジティブなエネルギーに変えようとしたんだ」

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ルイス・ハミルトン
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