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長谷部誠37歳の“スピード不足”を現地紙は指摘するが… 「落ちている部分はない」高い知性とスキルなら今季も期待大 

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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posted2021/09/01 11:01

長谷部誠37歳の“スピード不足”を現地紙は指摘するが… 「落ちている部分はない」高い知性とスキルなら今季も期待大<Number Web> photograph by Getty Images

37歳の今もなおブンデスの舞台で戦えているだけでも称賛に値するが、長谷部誠はさらに上のレベルを見据えているのだろう

「新しい監督は細かいところについて、練習でも試合でも、ミーティングでも言及するところがある。戦術的な部分だけではなく、ディテールの部分も。頭を非常に使わなければならないし、若い選手たちとしては、頭で考えてサッカーをしてしまうところがあると思うんですけど、経験ある選手がサポートしながら、若い選手の良さの勢いを消さないでやっていけたら」

 戦術的な規律を守り、コレクティブにプレーできるかどうかは、チームの成績に直結する、非常に重要なところだ。長谷部の言うように、グラスナー監督はヴォルフスブルク時代も細かいところまで妥協しない。徹底したアプローチで安定したチームパフォーマンスを引き出し、特に守備ではリーグ2位となる37失点でシーズンを終えている。

一糸乱れぬ連携構築までには時間が必要だ

 一方で昨季のフランクフルトはハマった時の破壊力こそリーグ屈指ながら、不用意な仕掛けでボールを失い、カウンターからの失点も多かった。自分たちらしさを残しつつ、攻守のバランスの向上を図るうえでグラスナー監督は興味深い人選といえる。

 とはいえ、一糸乱れぬ意志の疎通が取れるようになるまでには、だいぶ時間は必要となるはず。ドルトムント戦、アウクスブルク戦では長谷部が指摘するように、フランクフルトのゲームからは頭の中で考えすぎてそれぞれの力を発揮できていないというシーンも少なからずあったのだ。

 開幕節のドルトムント戦で長谷部はキャプテンとしてスタメン出場も、相手のスピードとパワーあふれるサッカーを掌握することができずに、2-5で完敗。地元紙からは長谷部のスピード不足を指摘する記述もあった。

 単純なスピード勝負だとさすがにじり貧になってしまうわけだが、そうした状況ばかりになってしまったのはチームとしての完成度がまだまだということでもある。

 ある程度以上チームが共通イメージのもと連動してプレーするというベースがあると、長谷部の読みの鋭さや試合の流れを読み切ったポジショニングが極上の意味を持つわけだが、チームとして連動して攻守に機能しなければ、誰が出ても問題を抱えてしまう。

 続くアウクスブルク戦では長谷部はベンチスタート。守備的な試合運びをする相手に対して多くの時間帯で主導権を握り、守備バランスはだいぶ改善されたようにも思われる。

 ボールを失ったらすぐに奪い返しに行く《ゲーゲンプレッシング》もかなり機能していた。ただ、今度は攻撃における起点づくりでギクシャクすることもあった。

【次ページ】 細かさを追求するあまり、かえってズレが拡大する恐れも

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