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長谷部誠37歳の“スピード不足”を現地紙は指摘するが… 「落ちている部分はない」高い知性とスキルなら今季も期待大
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/09/01 11:01
37歳の今もなおブンデスの舞台で戦えているだけでも称賛に値するが、長谷部誠はさらに上のレベルを見据えているのだろう
今季のフランクフルトでは、昨シーズンまで大事な得点源だったポルトガル代表FWアンドレ・シウバがライプツィヒへ移籍した影響をどのように修繕するのか、どのようにゴールチャンスを作るのかを考え出す必要がある。
細かさを追求するあまり、かえってズレが拡大する恐れも
新たにコロンビア代表FWラファエル・ボレが加入しているが、シルバのように前線でボールを収めて勝負をするタイプではないため、昨季同様の攻め方ではチャンスメイクすることが難しい。そのためビルドアップからのボールの持ち運び方、相手陣内でのチャンスの作り方でより変化をもたらせるようなプレーをグラスナー監督は構築しようとはしている。
細かさを追求することとは本来、チーム内に生じるズレを最小化しようとする作業だ。しかし細かくプレーしようしすぎたゆえ、逆にズレが大きくなる矛盾をはらんでいたりする。
例えばボールをDFから運ぼうとするケースでは、ポジショニングと体の向きが重要になる。ただ、それはボールを奪われずに運ぶための決まりごとのはずだが、忠実に守ろうとしすぎるがため、相手の動きに気を配り切れずにボールロストしてしまう。そんなシーンがこの2試合で少なからず見られた。
昨シーズンはプレーインテリジェンスの高い長谷部をボランチ起用することで、ズレを修正しつつ、相手にズレを生み出せたことも多かった。おそらく、今も長谷部を起用しながら、負担を軽減する組み合わせをすれば、ゲームコントロールはよりうまくいくだろう。
現地紙は「長谷部はポジションを失うかもしれない」と言うが
ただ、チームとして「長谷部がいなければゲームコントロールできない」の状況が続けば、いつまでも変われない。
それこそ長谷部の出場でさらにプラスアルファを生み出し、チーム全体の守備力が落ちないところまで完成度を高められたら――、フランクフルトはブンデスリーガにおける確固たる強豪としてその名を知らしめることができるのではないだろうか。何より昨季の好調時はまさにそうした関係性が見られていたからこそだ。
現状は長谷部にとって逆風状態といえるかもしれない。
ドイツのサッカー専門誌キッカーでは「長谷部は長期間レギュラーポジションを失うことになるかもしれない」という書かれ方もされている。さもありなんだ。でも、同じような話は昨シーズンにもあった。