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もがき苦しむDeNAの“和製スラッガー”候補生「とにかく練習しかない」3年目の伊藤裕季也を支える向上心 

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石塚隆

石塚隆Takashi Ishizuka

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posted2021/08/30 17:00

もがき苦しむDeNAの“和製スラッガー”候補生「とにかく練習しかない」3年目の伊藤裕季也を支える向上心<Number Web> photograph by JIJI PHOTO

今春のキャンプで守備練習に励む伊藤。2018年のドラフト2位。立正大学では主将を務めた

 今季前半はファームで200打席以上もらっていたが、打率は.206と低調なものだった。

 だがチャンスがないわけではなかった。ペナントレースが中断となったオリンピックブレイクにエキシビションマッチが行われたが、若手を起用するという方針のもと伊藤は一軍に帯同された。初戦となった7月27日のソフトバンク戦からスタメンで出場すると、4試合連続安打を記録する。とくに31日の楽天戦は本塁打を含むマルチ安打で2打点を挙げ、アピールに成功している。今季から取り組んでいる縦にバットを落とすフォームもしかり、結果を出すためいろいろと思案をした結果だった。

「バッターとして一番大事にしているのは“タイミング”なのですが、スイングの軌道を変えたことで、今シーズンはあまり合っていなかったんです。けど感触は悪くありませんでした。そこでエキシビションマッチでは、大胆に変えてみたんです。僕は慌てて突っ込んでしまうクセがあるので、落ち着いてゆっくりと合わせていくことを念頭に置きました」

 大きく構え、広い視野でタイミングを図ることで的確にミートする。伊藤はエキシビションマッチで結果を出したことが功を奏し、シーズン再開となる8月14日に今季初の一軍登録をゲットしている。

2打席のチャンスを活かせず

 伊藤としては、ここからが本格的な巻き返しとなるはずだった。しかしながら結局代打で2打席もらっただけで無安打のまま8月23日に登録抹消されてしまう。惜しむらくは、もっと伊藤の打席を見てみたかったし、首脳陣ももう少しチャンスを与えても良かったのではないかということだ。そう伝えると、伊藤はかぶりを振った。

「いや、2打席だったかもしれませんが、エキシビションマッチでスタメンや代打で出させてもらうなど、チャンスは多くもらったほうだと思っているんです。結果を残せなかった自分が悪いし、今は本当、悔しい気持ちしかないんですよ」

 伊藤に話を聞いたのは、登録抹消になった翌日の24日だ。結果を出すことができなかった失意のタイミングであり、普通ならば口調が重たくなるはずなのだが、伊藤は懸命に言葉を探し出し、絞り出すように答えてくれた。取材をする立場からすると感謝しかない。非常にありがたいことであり、こういった部分に伊藤の人間として、またプレイヤーとしての深みを感じずにはいられなかった。

【次ページ】 一軍で食らいついていくために

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