――孫選手との試合は、2ゲーム目が大きなポイントになりました。9－3とリードしていた展開でしたが、ゲームをどのようにご覧になっていましたか。

「2ゲーム目は、9－3まではすごくサーブが効いていて、相手が嫌がっていたのが分かりました。でも、五輪という負けられない大会のせいか、孫選手は3－9になってもまったくゲームを捨てず、すごく考えながらプレーしていて。そこからサーブ＆レシーブの組み立てというか戦術を少し変えてきた。そこに美誠が対応できなくて、徐々に追いつめられる展開になっていきましたね」

――9－7でタイムアウトを取った意図は何だったのですか。

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「次の2本のレシーブと2本のサーブを考えるためにタイムアウトを取りました。ただ、ここはタイムアウトを取るタイミングが1点遅く、9－6で取るべきだったと反省しました。9－6の時は、それまでサーブが効いていたので、サーブは美誠に任せようと思ってしまったんです」

――9－7になってサーブは孫選手に移りますが、2点を失って追いつかれました。

「9－7になって、相手のサーブをチキータで返して、スマッシュまでもっていける展開だったんですが、孫選手が粘って逆に1点取られました。作戦からするとレシーブ1本目の返しは成功だったんです。でも、作戦的に成功したのにもかかわらず、相手に点を取られてしまったことで美誠の考えがまとまらなくなってしまった。“どうしようかな”と考えてしまい、9－9に追いつかれてしまいました」

――同点後は再び伊藤選手のサーブ。まだ勝機があったと思います。

「1本目のサーブは悪くなかったんです。でも、孫選手に点を取られてしまってサーブでやることがなくなってしまった。9－10になった時は、作戦というよりも思い切って違うことをやり、一か八かの勝負に出たんですが、結果的に取られてしまって……。9－3から捲られ、この2ゲーム目を失ったのは美誠にとってかなりショックだったと思います」

©︎Asami Enomoto/JMPA

3ゲーム目の入りは「よくなかった」

――ゲームカウント0－2から伊藤選手がどう盛り返していくのかは大きな注目ポイントでした。3ゲーム目の入りは、どう見ていましたか。

「よくなかったですね。2ゲーム目を失った後、僕は美誠の出来がそこまで悪いとは思っていませんでした。ですから3ゲーム目も同じ戦い方から少し変化をつけるだけで良いと思っていたんです。例えばサーブでフォア前に出していたのをフォアミドル前に少しズラして出したり、レシーブもバックだったのをバックミドルに少しずらすとか、そういうところで流れを変えていければと思っていました。

　でも、2ゲーム目に9－3から捲られたダメージが大きかった。やることは間違っていないのに点を取れない。だったら違うことをやらないといけないんじゃないか。そういう迷いが生じて、考えがうまくまとまらなくなり、3ゲーム目からは一気に持っていかれてしまいました」

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