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《どちらが本物?》「鷹木信悟は暫定王者」オスプレイが持ち出した“2本目”のIWGP世界ヘビー級ベルト、混沌の行方は…
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2021/08/27 11:01
ウィル・オスプレイとベルトをめぐる渦中にいるIWGP世界王者の鷹木信悟
2008年2月、両国国技館。新日本のリング。IWGP2代目ベルト保持者の中邑真輔と3代目ベルト保持者のアングルのIWGPベルト統一戦(王座決定戦ではなく中邑の王座防衛戦)が行われた。
王者は中邑でアングルはただベルトを持っているに過ぎないという見識だが、IWGPという同じ名前の不思議なダブル・タイトル戦に見えた。IWGP王者と非公式王者(?)の対決が容認されてしまう、何でもあり状態だった。そんな中、中邑はアングルに勝って「プロレスはすげえんだよ」と叫んだ。
こうして時間はかかったが、3代目ベルトはやっと新日本に戻って来た。
鷹木とオスプレイのベルトをめぐる因縁は…
今、それと似たような事態が、オスプレイの行動によって起ころうとしている。いや、起こらないかもしれないが、当時とかなり似た状況にある。
IWGP世界王者の鷹木信悟は新型コロナウイルスに感染して8月14日の試合を最後に8月27日までの試合を欠場中。9月5日にはメットライフドーム(西武ドーム)でIWGP世界王座2度目の防衛戦がEVILを相手に行われる予定だが、これは鷹木の体調次第ということになるだろう。
ただ、オスプレイの「暫定王者」呼ばわりには、鷹木が「本物のIWGP世界ヘビー級王者として、すべてを背負ってリングに上がる」と反論している。
いずれ、鷹木はオスプレイとまた戦う時が来るだろう。理不尽な話にも見えるが、オスプレイの言い分通りなら、それは返上ではなく剥奪に近いものとも想像できる。
ベルトはどちらが保持しているものが本物で、どちらがレプリカなのかはわからない。返上を迫られて納得のいかないオスプレイがそのまま英国に持ち帰って、新たなベルトが作られたのかもしれない。いや、もしかしたら、ベルトは不測の事態に備えて最初から2本あったのかもしれない。もちろん、推測に過ぎない。ただ、同じデザインの「IWGP世界」のベルトが2本存在しているという事実はもう世界中のファンが知っていることだ。
オスプレイは本人がスピーチしたように、もう一つのベルトで勝手に王座防衛戦を続けるはずだ。だが、すでに鷹木がオスプレイに反応していることから、当然、この先何らかのアクションが起きることになる。