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「練習ができない」「体にキレが…」悪天候の甲子園に戸惑う監督と選手〈日大東北-近江は5回ノーゲーム→翌日もプレーボール遅延〉 

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間淳

間淳Jun Aida

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posted2021/08/20 11:03

「練習ができない」「体にキレが…」悪天候の甲子園に戸惑う監督と選手〈日大東北-近江は5回ノーゲーム→翌日もプレーボール遅延〉<Number Web> photograph by Kyodo News

雨に泣かされる今回の甲子園。日大東北-近江は5回ノーゲームとなり、翌日もプレイボール時間が遅延した

日大東北と近江も天候に振り回される

 この日も、球児や関係者は天候に振り回された。高松商が作新学院に勝利する半日前の午前7時58分。予定より2分早く、第1試合の日大東北と近江の一戦は始まった。

 上空は灰色。雨は降っていない。組み合わせ抽選で決まった日程からは6日遅れて、両校のナインは聖地の土を踏んだ。近江の先発は山田陽翔。日大東北の1、2番を連続三振に斬り、3者凡退の立ち上がり。軽い足取りでベンチに戻る。一方の日大東北先発の吉田達也も、先頭の好打者・井口遥希を見逃し三振に斬るなど、初回を無失点で終えた。

 午前中の天気予報は雨。2日前の東海大菅生と大阪桐蔭の一戦のように、降雨コールドの可能性がある。両校ともほしい先制点は、近江・井口のバットから生まれた。3回。2死から日大東北・吉田の直球を左翼スタンドに運んだ。

 試合が動いた直後の4回、甲子園上空の雲が厚くなり、雨が降り始めた。その後、黒い雲は流れて雨は弱まった。だが、5回に入ると再び雨が強くなる。新たな黒い雲が現れ、聖地は夕方のように暗くなった。午前9時2分、内野の照明が点灯。その1分後、甲子園に雨音が響く中、近江の攻撃中に試合は中断された。場面は2死満塁、フルカウントだった。

「5回までできたことは次に生きてくる」

 雨が弱くなる様子はない。時々、雷も鳴っている。2時間22分の中断。

 無人のグラウンドに主審が現れ、ノーゲームを告げた。

 近江は1-0でリードしていた試合が無効になった。それでも、幻の本塁打となった井口は「相手エースの球を見ることができてイメージトレーニングしやすくなった。5回までできたことは次に生きてくる」と前向きに捉えた。多賀章仁監督も「ゲームができたのはよかった。選手は仕切り直してやってくれると思います」と話した。

 大会本部が異例の対応を決めたのは、この後だった。

【次ページ】 1回戦よりも2回戦を先に行う“逆転現象”が

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