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1年で脇役からヒール役に…カシメロの次戦はやっぱり井上尚弥?「大揉めしたのにドネア戦の可能性もある」理由
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2021/08/23 11:01
“軽量級のレジェンド”ギジェルモ・リゴンドーに判定勝ちしたカシメロ。井上尚弥との対戦は実現するか?
リゴンドー戦後の会見でカシメロはそう息巻いた。今後、WBAスーパー、IBF王座を持つ井上尚弥(大橋)、5月にWBC王者になったノニト・ドネア(フィリピン)、そしてWBOタイトルを守ったカシメロという3強がどのような組み合わせ、順番で潰し合いを演じるかがバンタム級戦線の見どころとなっていくはずだ。
ここに辿り着くまでには、もともと8月14日に一度はカシメロ対ドネアのフィリピン対決がセットされながら、ドネア側が望んだVADA(ボランディア・アンチドーピング機関)の薬物検査にカシメロ側の登録が遅れたことと、カシメロ陣営の度が過ぎたトラッシュトークが理由でキャンセルになった経緯がある。
結局はカシメロ対リゴンドーというカードに落ち着いたが、そんな流れを考えれば、この先、カシメロとドネアが再びWBC、WBO統一戦の交渉を進めるのは容易ではないようにも思える。井上のアメリカでのプロモーターであるトップランクは、2019年11月以来となる井上とドネアのリマッチを優先的に視野に入れていると話していた。ここでまず井上とドネアが3団体統一戦を行い、その後にカシメロと最終決戦という流れが最も自然ではある。
カシメロ陣営「ドネア戦の契約は消えたわけではない」
ところが――。気になるのは、リゴンドー戦後にカシメロ陣営が「ドネア戦の契約は消えたわけではない」と主張していたことだ。
契約社会のアメリカにおいて、「一度契約書にサインした以上、トラッシュトークを理由にそれを反故にして別の選手と対戦するなどと簡単にはいかない」というカシメロ側のショーン・ギボンズ・プロモーターの主張は無視できない。薬物検査の登録にしてもドネア側の希望日時にカシメロが沿わなかったのであり、カシメロが契約違反を犯したわけではない。一連の騒ぎの中でドネア側を支持するファンは日本にも多いだろうが、感情的な部分を抜きして、訴訟などに発展した場合に有利なのはカシメロ側かもしれない。
また、リゴンドー戦後、井上もSNS上でドネアではなくカシメロとの統一戦希望を記している。これまでカシメロから散々挑発を受け、リゴンドー戦後には中指を立てる仕草まで見せられただけに、早々に自らの手で黙らせたいという思いが湧き上がってきたのだろう。