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1年で脇役からヒール役に…カシメロの次戦はやっぱり井上尚弥?「大揉めしたのにドネア戦の可能性もある」理由 

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杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

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photograph byGetty Images

posted2021/08/23 11:01

1年で脇役からヒール役に…カシメロの次戦はやっぱり井上尚弥?「大揉めしたのにドネア戦の可能性もある」理由<Number Web> photograph by Getty Images

“軽量級のレジェンド”ギジェルモ・リゴンドーに判定勝ちしたカシメロ。井上尚弥との対戦は実現するか?

 この井上の希望を知ったギボンズ・プロモーターは、「今週末以降、すべての関係者と話して今後の方向性を決める。日本でもビッグファイトが開催できることを願っているよ。井上と日本で対戦できるとしたら夢のようだ」と前向きな様子だった。あくまで条件が合えばだが、次戦でカシメロがドネア、井上のいずれかと対戦することになっても驚くことはなさそうだ。

1年前まで“脇役”だったはずが…

 ここまで書いてきて少々信じがたい思いもある。ほんの数年前まで、カシメロは世界タイトルホルダーではあっても世界的な知名度は乏しく、“荒削りなジャーニーマン”というイメージの脇役だった。2020年4月にラスベガスでの井上戦が決まった際も、あくまで“モンスターのお披露目試合の相手”という趣で捉えられていた。しかし、結局はパンデミックゆえにキャンセルされた幻の井上戦と前後して、カシメロは実力者相手の勝利とトラッシュトークで一気に商品価値を上げてきた印象がある。

 依然として井上、ドネアと同等の技量を持っているとは思えないが、それでも彼らのライバルとみなされる位置まで自身を導いてきた。2強との対戦は今では因縁対決として注目され、実現すれば好報酬を得るのだろう。その礼儀を欠いたやり方を好きかどうかはともかく、あくまでプロボクシングをビジネスとみなすなら、現在の立場に辿り着いたカシメロとその陣営は目を見張る仕事をしたと言えるのかもしれない。

正統派スターとヒールによる“波乱のバンタム級戦線”

 もちろん今冬までに3強の直接対決がスムーズに実現するという保証があるわけではない。マッチメークが比較的容易な軽量級とはいえ、井上はトップランク、ドネアとカシメロはPBCという所属プロモーターの違いは、例によって障害になりかねない。井上絡みの統一戦はやはり日本開催が興行的に理に適うのだが、パンデミックの影響でその準備がいつ整うかも定かではない。また、カシメロの薬物疑惑を知った井上は厳格なPED(パフォーマンス向上薬)検査を主張しており、実際にそうするべきだが、その方法をめぐって交渉中に紛糾する可能性も否定できない。

 ただ……それでも当の主役たちがこれだけ統一戦を熱望しているのであれば、何らかの形で道は開けると希望も込めて思いたい。

 井上、ドネアという2人の正統派スターに加え、カシメロというヒールが台風の目となり、バトルは過熱する一方。波乱のバンタム級戦線は、軽量級史上に残る戦いの果てに戦慄のクライマックスを迎えようとしている。

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