ボクシングPRESSBACK NUMBER
1年で脇役からヒール役に…カシメロの次戦はやっぱり井上尚弥?「大揉めしたのにドネア戦の可能性もある」理由
posted2021/08/23 11:01
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Getty Images
これほど継続的にブーイングが響き渡る世界タイトルマッチをリングサイドで観たのはいつ以来だっただろうか。あるいは初めてだったかもしれない。
8月14日、カリフォルニア州カーソンで行われたWBO世界バンタム級タイトルマッチで、王者ジョンリエル・カシメロ(フィリピン)が2階級制覇王者で現在はWBA同級正規王座を保持していたギジェルモ・リゴンドー (キューバ)に2-1(117-111, 116-112, 113-115)の判定勝ち。軽量級の“レジェンド”を下したカシメロがバンタム級のトップ戦線に生き残った形になった。ただ、その試合自体はお世辞にも上質とは呼べず、歴史的凡戦と称されても仕方ない内容だった。
両者のパンチヒット数は“過去最小”を記録
「退屈な試合になってしまったけど、俺は相手をKOするためにベストは尽くした」
試合後、記者会見場に登場したカシメロは表面上こそ威勢の良さを保っていたものの、言い訳にも取れるコメントも少なくなかった。勝ち名乗りを受けたとはいえ、ほとんどパンチが当たらなかったというバツの悪さはあったのだろう。
序盤から徹底して足を使うも、攻撃の機会はごく限られていたリゴンドー。逃げる相手を追い詰めるスキルとフットワークを持たないことを露呈したカシメロ。攻防はまったく噛み合わず、両者のパンチのヒット数の合計91発(カシメロは47発、リゴンドー は44発)はパンチ数集計サービス『CompuBox』が統計を取り始めて以降の12回戦で最少の数字だったという。最安値でも70ドルという軽量級戦としては高めの値段設定だったチケットを買ったファンが、ブーイングを送り続けたのは仕方あるまい。
「実は5、6回で見るのを止め、家族に電話をしていたよ。リゴンドーが足を使い始めたら退屈な試合になるのは分かっていたから、もう注意を払わなかったんだ」
今回の興行のアンダーカードに登場し、鮮烈な2回KO勝ちを飾った元WBA同級スーパー王者ルーシー・ウォーレン(アメリカ)が述べたそんな言葉は象徴的だったのだろう。次戦でこの一戦の勝者と対戦の可能性もあるウォーレンをしてそうなのだから、試合途中にテレビの前を離れたファンは多かったに違いない。