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なぜ“埼玉の絶対王者”花咲徳栄は県5回戦で負けたのか?「ヤバい、ヤバい」「生徒の心が見えなかったなぁ」監督と選手の証言
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph bySankei Shimbun
posted2021/08/25 17:02
埼玉県大会5回戦、花咲徳栄対山村学園。サヨナラ負けで甲子園連続出場が「5」で途絶え、ショックを受ける花咲徳栄の選手たち
「見えなかったですね。生徒の心が見えなかったなぁ……。1年間、楽しい時があんまりなかった。一緒にいる時間をもっと多くしてあげるべきでした」
「今、ギラギラしてる」
短すぎた夏。教訓は受け継がれる。
埼玉県加須市。校舎に隣接した花咲徳栄の野球場では連日、練習や試合が行われている。言うまでもなく、感染予防対策は万全の上で、である。
監督の檄が頻繁に飛ぶ。間髪入れず、選手たちの返事が返ってくる。威勢は、いい。
「甲子園に出ていた時って、新チームが始まるのは早くても8月中旬以降なんですよ。そうなると、9月の秋の大会がすぐですから、『とにかく練習試合をたくさんこなして臨もう』みたいになっていたんです。でも今年は、7月から新チームをスタートできましたんでね、強い弱い関係なく、もう1回、地に足を付けて土台からしっかり作りますよ」
そう言って岩井がニヤリと笑い、続ける。
「2、3年、待っててください」
自信を覗かせるように鋭い目を向ける。19年から生じる綻びを修復するには、同じくらいの歳月が必要ということなのだろう。
51歳とは思えないほど、黒く日に焼けた肌には張りがあり、生気も漲っている。
失礼を承知でぶつけてみた。
――負けて若返ったような、さらにギラギラしてきたような、そんな印象を受けます。
岩井が、ゆっくりと頷いた。
「今、ギラギラしてる。監督になったばっかりの頃を思い出したというか。そういう意味では若返ったような気分はあります。これから、面白くしていきますよ」
埼玉の王者。敗れてこそ、強さを求める。
花咲徳栄の風格を見た。
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