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「僕も普通の人間だよ」夜中12時の全豪OPで泣き出したサンプラス…あの時何があったのか?〈26年前の名勝負〉
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2021/08/12 11:03
本日8月12日はサンプラスの誕生日。1995年の全豪オープン準々決勝、突然の涙の理由とは?
試合後の記者会見では、前もってトーナメント・ディレクターのほうからサンプラスの動揺はコーチの病気のせいだったと説明があり、その詳細についての質問を控えてほしいという要請がされた。しかし2日経つと少し落ち着いたのか、準決勝でチャンを破ったあとの会見でこう語っている。
「僕も普通の人間だよ。ロボットじゃない。そのへんの通りを歩いている人と同じなんだ。だから、この状況を乗り越えるのはすごく難しいよ」
クーリエ、チャンと破ってきたサンプラスは、最後にアガシに敗れた。黄金世代の中でも、特に深いライバル関係をその後も築いていく二人である。
表彰式で「ずっとあなたのことを考えながら戦っていた。あなたがここにいてくれたらよかったけれど……」と声を詰まらせながらコーチに語りかけたサンプラスのスピーチのあと、アガシは自身のスピーチでこう語った。
「ピートが見せた勇気はすばらしかった。彼が辛い状況に負けずここで見せたものに僕は刺激を受けたし、僕を奮い立たせてくれた」
あの涙の夜からはもう26年
その翌年、ガリクソンは44歳の若さで生涯を閉じた。サンプラスの失意は想像に難くないが、その後も2000年11月まで断続的に1位の座につき、最長で1996年から98年にかけて連続102週の王座を記録した。グランドスラム優勝回数は14回。それは2009年のウィンブルドンでロジャー・フェデラーに抜かれるまで男子の史上最多記録だった。
その最後の優勝は2002年の全米オープン。最後に倒した相手はアガシだった。そして、それから一度もコートに戻らないまま、1年後の全米オープンの会場で「去年のここでの優勝以上に高い山はもう僕には見当たらない。僕にとって最大のチャレンジだった」と言って引退を発表した。
クーリエはすでに2000年に引退しており、チャンはサンプラスが引退を発表した2003年の全米オープンを戦ってからツアーを去った。そして36歳までプレーしたアガシが2006年に引退し、時代は終わった。あの涙の夜から四半世紀以上が経ち、サンプラスは8月12日に50歳の誕生日を迎える。アメリカ勢の不振が嘆かれて久しい昨今だが、黄金世代の輝きの記憶が色褪せることはない。
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