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「馬に乗ることが好きだからね」JRA“最年長”重賞制覇の柴田善臣(55)はなぜ勝ち続けられるのか? <蛯名正義との凱旋門賞秘話も>
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph byTomohiko Hayashi
posted2021/08/11 11:00
2000年の高松宮杯を制したキングヘイローと柴田善臣騎手
「馬に乗ることが好きだからね」
2011年の暮れ、そのナカヤマナイトに騎乗してディセンバーSを制すと、それが柴田善騎手にとってのJRA通算2000勝となった。それからおよそ10年経ったこの夏、55歳になって尚、重賞を勝ってみせた。ここで改めてメイショウムラクモの和田勇調教師の弁。
「初めて善臣さんに乗ってもらった未勝利戦の時、返し馬で外を向いて掛かってしまいました。その際『今後は1頭で返し馬を出来るように馬場入りを最後にした方が良いのでは?』とアドバイスをくれたのも善臣さんでした」
以来、実際にそれを実践した事が、今回の重賞制覇につながった。
「4コーナーではステッキを落としてしまったので決して格好良く乗れたわけではありません。メイショウムラクモと関係者の皆さんに助けていただいての記録だと思っています」
柴田善騎手はベテランらしく、自らの手柄を語る事はなく、そう言った。
昨年の秋には騎乗馬が暴れて左第5中足骨骨折の重傷を負った。「早く馬に乗りたい」の一心で復帰したものの、患部が音を上げて再びリタイアした時期もあった。それでも、またも元気に競馬場に戻ると、今回の記録達成である。
「馬に乗る事が好きだからね。乗せてもらえる限りは乗っていたいですよ」
まだまだベテランの活躍が見られそう
ちなみに今回の最年長重賞制覇記録が、20年近く前の岡部元騎手の記録を更新したものである事は冒頭に述べたが、詳しくは02年に樹立された記録であった。当時の岡部元騎手は53歳ながら天皇賞(秋)(GⅠ)をシンボリクリスエスで制し記録を打ち立てると、その1週間後にサンライズジェガーでアルゼンチン共和国杯(GII)を優勝して自らの持つ最年長記録を更新。更にそれから1カ月と経たないうちに今度はホットシークレットでステイヤーズS(GIII)を勝利。ものの2カ月ほどの間に3度も記録を塗り替えてみせた。
今回の柴田善騎手は、レパードSを制覇した翌日の8月9日、盛岡競馬場で行われたクラスターC(JpnIII)をリュウノユキナで優勝。JRAとNARの重賞を2日連続で優勝してみせた。その騎乗フォームは若い時と同様に綺麗で、全く衰えを感じさせない。今後もまだまだベテラン騎手の活躍が見られそうだ。自らの最年長重賞制覇記録を更新する日がすぐにやって来る事を期待したい。