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「馬に乗ることが好きだからね」JRA“最年長”重賞制覇の柴田善臣(55)はなぜ勝ち続けられるのか? <蛯名正義との凱旋門賞秘話も> 

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平松さとし

平松さとしSatoshi Hiramatsu

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photograph byTomohiko Hayashi

posted2021/08/11 11:00

「馬に乗ることが好きだからね」JRA“最年長”重賞制覇の柴田善臣(55)はなぜ勝ち続けられるのか? <蛯名正義との凱旋門賞秘話も><Number Web> photograph by Tomohiko Hayashi

2000年の高松宮杯を制したキングヘイローと柴田善臣騎手

凱旋門賞をめぐる、蛯名正義との“秘話”

 また、10年にはこんな事もあった。宝塚記念(GⅠ)で、柴田善騎手が鞍上を任されたのはナカヤマフェスタ。前走のメトロポリタンSで初めてタッグを組むと、いきなり優勝。本来は蛯名正義騎手(現調教師)が主戦を務める馬だったが、引き続き柴田善騎手が乗ると見事に連勝。ナカヤマフェスタにとっても初となるGⅠ制覇をエスコートしてみせた。

 こうしてグランプリホースとなったナカヤマフェスタは、その秋、海を越えて凱旋門賞(フランス、GⅠ)に挑む事になる。結果、前哨戦のフォワ賞(GII)を2着すると、本番の凱旋門賞でも勝ち馬のワークフォースにアタマ差まで迫る2着に好走するのだが、このフランスでは鞍上が再び蛯名正義騎手に戻されていた。これは管理する二ノ宮敬宇調教師(勇退)とのコンビで過去にもこのヨーロッパ最高峰のレースでの2着(99年のエルコンドルパサー)があったから自然な流れではあった。翌11年にも、凱旋門賞のレース後に、蛯名正義騎手は柴田善騎手の事を「善ちゃん」と言い、唇を噛みながら次のように語った。

「善ちゃんが宝塚記念を勝ってくれたから凱旋門賞にも挑めるようになったのに、本人は帯同馬のナカヤマナイトに騎乗して、こちらの鞍上は僕に譲ってくれました。なかなか出来る事ではありません。善ちゃんの気持ちを思うと、何としても勝って恩返しをしたかったです」

 これは何もレース後に慌ててそう言ったわけではなかった。実は決戦前夜、私はこの2人の騎手とレース前最後の晩餐をとる機会に恵まれていた。競馬場から最も近くにある高速道路の出入り口であるポルト=マイヨの側にある日本食レストラン。ここでもう1人の知人と計4人で食事をした。その席でも蛯名騎手は同様の事を語っていたのだ。

 この日の日中のレースでナカヤマナイトの手綱を取っていた柴田善騎手は、それに対して特に何も言わなかった。自分に与えられた仕事を黙々とこなすだけ、という姿勢の彼に職人らしさを感じたものである。

【次ページ】 「馬に乗ることが好きだからね」

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