炎の一筆入魂BACK NUMBER
中断期間、打率5割の野間に左翼定着を狙う中村奨…カープ再建の鍵は次世代の主力がもたらす勝利にあり
posted2021/08/12 11:02
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
JIJI PHOTO
4年に1度の大舞台で、すべてをぶつけるアスリートの姿は多くの人の心を動かした。スポーツの祭典が幕を下ろし、13日からプロ野球の後半戦が始まる。
金メダルを獲得した侍ジャパンに4選手を送り出した広島は、前半戦を30勝42敗10分けの5位で折り返した。首位阪神に13.5ゲーム差。さらにクライマックス・シリーズ出場圏内の3位ヤクルトまで11ゲーム差と離されている。ペナントレースの表彰台頂点はきわめて困難であり、表彰台に登ることも厳しい状況にある。
それでも戦いは続く。残り61試合は今季の順位を決めるだけでなく、来季以降のチームづくりに大きな影響を与える。
下位に沈むとはいえ、後半戦に求められるのは、勝つこと以外にない。
一部のファンの間では大胆な世代交代を求める声も聞かれる。だが、勝敗を度外視した選手起用や戦術ではチームは育ちにくい。
FAに頼らない、広島ならではのチームづくり
たとえば今季の前半戦。多くの若手が出場機会を得て、チームの起爆剤となり、台頭した選手もいた。
だが、若手の思い切りの良さを消さないよう、一定の自由が与えられていた。チーム方針として掲げる右打ちや進塁打などは求めず、自分らしさを発揮しやすい状況を優先した。若手にとっては結果を出しやすい環境作りである一方、筆者には理想とするチームづくりの停滞でもあるようにも感じられた。
リーグトップタイのチーム打率2割6分1厘を記録しながら、総得点数はリーグ5位の298得点にとどまる。本塁打数の少なさとともに、つなぎの攻撃がまだチームに浸透していないという課題がある。前半戦は内野ゴロでも1点を取れる状況で、ポップフライを打ち上げる場面も散見された。
3連覇も3年前。大型補強をしない広島のチーム強化は一足飛びとはいかない。一歩ずつ強化していくしかない。