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本田宗一郎没後30年目のハンガリーGPで勝てず首位陥落のホンダ…世界一の夢を描いた「オヤジ」ならどんな言葉で激励するか
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2021/08/06 11:01
ハンガリーGPでスタート直後の多重クラッシュに巻き込まれたフェルスタッペンは、マシンにダメージを負いながらも9位入賞、2ポイントを獲得した
今年のハンガリーGPで、こんなことがあった。1戦前のイギリスGPでクラッシュしたマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)のパワーユニットが壊れていないかどうかを日本とイギリスのファクトリーで調査した結果、問題ないことが判明し、ハンガリーGPのフリー走行で走らせた。金曜日の走行でも問題はなく、走行後のチェックをしても異常がなかったので、ホンダは土曜日以降もそのパワーユニットを使用し続けることにした。しかし、土曜日の予選後にガレージでチェックしたところ、それまで異常がなかったところにクラック(亀裂)が入ってオイルが滲み出ていたという。
「予選前にも同じところを確認していますがまったく異常がなかったし、データ上でも、パフォーマンスにはまったく影響が出ていませんでした」
もし、クラックを見逃していれば、日曜日のレースでなんらかの不具合が発生していたかもしれない。田辺らホンダのスタッフはレース前ギリギリの段階でパワーユニットを交換し、トラブルを未然に回避した。
しかし、レースでスタート直後の多重事故に巻き込まれたフェルスタッペンは、1周目にピットインして最後尾に。さらに車両の一部が破損していたため、10位まで追い上げるのが精一杯だった(レース後、他車の失格があり、9位に繰り上がり)。
この苦境をどう乗り切るか
前戦イギリスGPに続いて勝利を逃したホンダは、ドライバーズ選手権、コンストラクターズ選手権でともにメルセデスに首位の座を譲った。苦境はポイントを逆転されたことだけではない。クラックが入ったパワーユニットが使用不能ということになれば、今後ペナルティを覚悟しなければならない状況にも陥る。
こんなとき、本田宗一郎なら自らの名言を用いて、田辺らホンダのスタッフを激励するに違いない。
「成功者は、たとえ不運な事態に見舞われても、この試練を乗り越えたら、必ず成功すると考えている。そして、最後まで諦めなかった人間が成功しているのである」
没後30年を目の前に行われた今年のハンガリーGPで、ホンダは勝利を天国の本田宗一郎に捧げることができなかった。しかし、本田宗一郎の夢は世界一になること。その戦いは、まだシーズン前半戦を終えたばかりだ。