F1ピットストップBACK NUMBER
F1の来季シート争いがヒートアップ!
可夢偉とマッサの“オプション”に注目。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2012/08/26 08:01
今季、全20戦中11戦を戦った小林可夢偉。ドライバーズポイントでは、過去最高となる33ポイントをすでに獲得しているのだが、チームメイトのペレスの表彰台などで、なかなか評価が定まらない状態ともいえる。
ストーブリーグという言葉がスポーツ界にある。春に開幕して秋に閉幕するスポーツの人事がシーズンオフとなる冬に行われるためである。F1もほかのサマースポーツと同様に、冬がシーズンオフとなるが、翌年に向けての人事はシーズン中から開始される。それがちょうどいまごろ佳境に突入することから「ストーブ」ではなく、「プールサイドリーグ」と呼ばれるようになった。
そのプールサイドで、いま熱い注目を浴びているのが、今シーズン限りでチームとの契約が切れるドライバーたちである。その中で、ウェバーはすでに7月10日に「2013年もレッドブルに残留する」と発表。また、発表はまだないものの、7月下旬のハンガリーGPで今シーズン2勝目を挙げたルイス・ハミルトンのマクラーレン残留も時間の問題だと言われている。
マッサとのオプション契約を凍結したフェラーリの思惑。
そうなると、多くの人々が関心を寄せるのが、トップチームの中で唯一、来季のシートが確定していないフェラーリである。
チームとマッサの契約は、今シーズン限り。そんな中、フェラーリの地元であるイタリアのモータースポーツ誌が「フェラーリはマッサとのオプション契約を行使しない」という記事を掲載した。
オプション契約とは、本契約とは別に追加で契約を締結する権利のことである。多くの場合は、チームがドライバーに対して持ち、さらにそのオプションを行使できる期限は、7月から8月いっぱいに定められているケースが多い。イタリアのモータースポーツ誌の記事も、マッサとのオプション契約の期限を確認したうえで、その時期を迎えてもフェラーリが契約延長の発表をしないことから、この記事を出したものと考えられる。
しかし、オプション契約を行使しなかったからといって即、マッサのシートがフェラーリからなくなったわけではない。オプションを行使して契約を延長する以外にも、新規の契約をマッサと結ぶという方法が残っているからだ。
2013年もマッサと契約するのなら、なぜ保持しているオプション権をフェラーリは行使しないのだろうか。そこには、フェラーリとマッサの間にある、複雑な事情が見え隠れする。