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妻との入籍日は松田直樹の命日《8月4日》…飯田真輝35歳はなぜ「マツさんの思い」を“勝手に受け継いだ”のか
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byNARA CLUB
posted2021/08/05 17:02
松本山雅で松田直樹と共にプレーし、現在は奈良クラブに所属する飯田真輝(左)
「僕がゴールを決めるとメチャクチャ喜んでくれるんですよ。ヘディングで2点獲った試合があって、1点目のときにバーッと自分のところに来て頭を持たれたから髪をグシャグシャってやるのかなって思ったら、そのまま崇めてくれるっていう感じで(笑)。あの場面は今も強烈に覚えていますね。試合中はあんまり動かないのに、そういうときは飛んで来てくれて自分のゴールのように喜んでくれる。それがたまらなくうれしかったですね」
あのとき松田は34歳、自分も今35歳
センターバックを本職としているとあって、多くのアドバイスや言葉を掛けられてきた。
“タイプとして佑二に似ている。飯ちゃんなら絶対やれるよ”
横浜F・マリノスでずっとコンビを組んできた中澤佑二の名前を出してハッパを掛けられたこともある。ヘディングで負けるな。点を取ってヒーローになれ。一つひとつの言葉を心にとどめた。
あのとき松田は34歳、自分も今35歳。
経験を重ねてきたからこそ余計に、松田直樹のスケールの大きさを理解できるところがある。
「F・マリノスからJFLに上がって2年目のチームにやってきたら、俺とお前らは違うんだぜってなってもおかしくないじゃないですか。あれだけ実績を残している人ですから。でも全然そんなことない。試合中にマツさんの指示に納得できなくて言い返したこともある。“いいからやれ!”と言われてそのとおりにやったけど、試合が終わったら俺が話しやすいように“飯ちゃんはそう言ってきたけど、実際はどう見えていた?”とか聞いてくれて、同じ目線で話してくれる。懐が深いな、この人はって思いましたよ。
あのときも凄いなって見てましたけど、今ならもっと分かるというか。奈良クラブのなかで自分はキャリアが一番上だし、J1も経験しているんでチームメイトはリスペクトしてくれています。やっぱり若い選手(の能力)を引き出していくには、マツさんがやったように自分から目線を合わせたほうがいい。自分に対してほかの選手が言えない組織ってうまくいかないと思うんです」
松田の情熱の凄さをより理解できるようになった
松田は誰よりもサッカーを楽しんでいた。ボール回し一つ取っても本気だった。その情熱の凄さをより理解できるようにもなった。