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19歳四十住さくらがスケボーで金 恩師が証言する“負けず嫌い伝説”「5時間滑り続ける」「テレビは一切見ない」
text by
吉田佳央Yoshio Yoshida
photograph byGetty Images
posted2021/08/04 17:04
メダルラッシュが続くスケートボード。女子パーク種目で初代女王に輝いたのは19歳の四十住さくらだった
「自分ができてさくらができないトリックがあるとしましょう。それで勝負してさくらが負けたら、絶対勝つまで勝負を挑んでくるんです。しかも乗る(成功する)まで絶対にやめません。だからその相手をしていると、そのうちこっちが疲れてギブアップ。だからさくらの相手をするには、3人で1時間30分ずつ交代しないとできない。でもさくらは5時間滑り続ける。時にはできなくて心折れそうになる時もあるんですけど、成功に近づくトライがあるたびにゾーンに入って体力が回復する。すごい女の子ですよ」
そのようなエピソードを聞けば、彼女が18年の日本選手権、新種目に採用されたアジア大会、初開催となった世界選手権の3大会を制し、すべてで初代女王に輝いたことも頷ける。
最大のライバル・岡本碧優に勝つために
ただそんな彼女に最大のライバルが現れた。女子レベルを超越したエアートリックに代名詞となる「540」で世界を席巻し、今大会も4位入賞を果たした岡本碧優だ。世界でも圧倒的な強さを見せ、五輪予選も全勝。そのままの勢いで金メダルも確実と見られていた。
ただそんな情勢に待ったをかけたのがコロナ禍だった。
五輪の1年延期は、追う者にとって最高の追い風となる。しかも彼女には自信に足りないものがはっきりと見えていた。それは岡本の最も得意とするエアー「540」だ。
もともとリップトリック(コースの縁で仕掛けるトリック。繊細なテクニックを必要とする)では彼女に分があるのは明らかだった。そのバックボーンがあるからこそ、エアーを強化すれば再びチャンピオンに返り咲けるはず。中断期間はひたすらエアーを強化した。
地元企業からの協力も彼女を後押しした。それまで自身の住む街から、毎日往復3時間かけて神戸の“g” スケートパークまで練習に行っていたのが、国内初の選手専用のプライベートパークが作られたのだ。しかも一般客が立ち入らない“四十住のためだけの練習場”だ。