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米国生まれの23歳・五十嵐カノアはなぜ日本国籍を選んだのか「日本在住の“おばあちゃん”の応援も…」《サーフィン銀メダル》
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2021/07/30 17:03
7月27日、決勝戦での五十嵐カノア。見事に銀メダルに輝いた
「家族の期待、日本に住むおばあちゃんの応援」
東京五輪の出場が決まってからは眠れないほどの重圧を感じる時があったという。
「日本代表として日本の旗を振っているのだから、皆のために良いパフォーマンスを見せたい、金メダルを獲りたいと考えすぎて眠れない日もあった」
なぜこれほどまで重圧を感じるのか。
考えた末に出てきたのが「オリンピックでサーフィンが行なわれるのは初めてだから。東京五輪という大会の大切さがプレッシャーになっている」ということだった。
その答えを得た昨年ごろからは、重圧がエネルギーになることに気づいた。
「オリンピックは僕が特に大切にしている大会だからプレッシャーがあるのだと思う。今はプレッシャーが面白い。サーフィンはオリンピックで初めて行なわれるし、僕は日本で日本代表として戦うし、家族やスポンサーの期待がある。日本に住むおばあちゃんの応援もある。プレッシャーがあるのは当たり前。プレッシャーから逃げてももったいない」
「日本のために金メダルを集めることに意味がある」
五十嵐はこのようにも語っていた。
「五輪の金メダルはスポーツ選手のピーク。ウサイン・ボルトやセリーナ・ウイリアムズの隣に自分の名前を入れたい。それに、日本のために金メダルを集めることには価値がある。日本のサーフィンのファンだけじゃなく、バスケットボールのファン、野球のファンに五十嵐カノアが日本のために金メダルを持ってきてくれたと思ってもらえるようになればいい」
究極の目標は「サーフィンに詳しくない人にも五十嵐カノアを知ってほしい」ということだ。金メダル獲得は24年のパリ五輪に持ち越されたが、全力で戦い抜いての銀メダルで、多くの人々の心に「五十嵐カノア」の名前と「サーフィン」という競技の魅力が刻み込まれた。