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米国生まれの23歳・五十嵐カノアはなぜ日本国籍を選んだのか「日本在住の“おばあちゃん”の応援も…」《サーフィン銀メダル》
posted2021/07/30 17:03
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
Kiichi Matsumoto/JMPA
東京五輪新競技のサーフィンで男子銀メダルに輝いた五十嵐カノア。台風8号の接近でタフなコンディションとなった千葉県・釣ヶ崎海岸サーフィンビーチで力強いライディングを見せた23歳は、日本人の両親の間に米国で生まれ、2017年まで日本と米国の二重国籍だった。英語はネイティブで、ポルトガル語、スペイン語、フランス語も堪能というマルチリンガルの五十嵐。世界の海をまたにかけて活躍する彼が日本国籍を選んだのはなぜか。
カノアはハワイ語で「自由」
「海の中の神様へ『ありがとう』と言いました」
海からなかなか引き揚げられないほどの悔しさが胸の中で渦巻いた。金メダルだけを目指してきたからこその感情。しかし、とめどなく流れる涙の意味を聞かれた五十嵐は、徐々に感謝の気持ちが膨らんでいったことを明かし、「ありがとう」の言葉が出た。その姿は多くの日本人に感動を与えた。
五十嵐は1997年10月1日、米国カリフォルニア州サンタモニカで生まれ、「SURF CITY」として知られる同州のハンティントンビーチで育った。両親はともにプロサーファー。3歳の時にハワイの海で初めてサーフボードに乗り、ジュニア時代から各大会で大活躍し、13歳でプロになった。
ハワイ語で「自由」を意味する「カノア」という名前が日本で注目を浴びるようになったのは、2016年8月にサーフィンが東京五輪の新競技として採用されることが決まってからだ。
日本と米国の国籍を持っていた五十嵐は、ジュニア時代から米国の選手として大会に出場していたが、サーフィンが東京五輪の正式種目になった翌年の17年に「日本人としてオリンピックに出たい」と表明。21歳になる18年に日本代表として戦うことを選択した。