新刊ドラフト会議BACK NUMBER
『野球が好きすぎて』鯉党ミステリ作家が贈る、謎解きはプロ野球ネタのあとで。
text by
尾関高文(ザ・ギース)Takafumi Ozeki (The Geese)
photograph bySports Graphic Number
posted2021/07/27 07:00
『野球が好きすぎて』東川篤哉著 実業之日本社 1760円
「今村トンボ事件」をご存知だろうか。試合中カープ今村猛投手の後頭部にトンボが止まり1イニング投げ終わるまでずっと止まり続けたという、プロ野球ファンの記憶に残るシーンである。
本書では、そんなプロ野球で毎年起こる思い出深い出来事を軸に様々なミステリが展開される。プロ野球ファンにとってこんなにワクワクするミステリ小説はないだろう。
25年ぶりのカープの優勝をテーマにした「カープレッドよりも真っ赤な嘘」に始まり「2000本安打のアリバイ」「タイガースが好きすぎて」など全5話。タイトルを見るだけでお分かりだろう。野球ファンなら誰もが楽しめる構成になっている。特に「パットン見立て殺人」などはタイトルだけであの事件(ベイスターズの助っ人投手パットンが怒りのあまりベンチにある冷蔵庫を殴って指を骨折した)がどうトリックに関わってくるのか、もうすぐにでも読みたい衝動に駆られるのではないだろうか。