プロ野球PRESSBACK NUMBER
“優勝チームに名捕手あり” 阪神・梅野隆太郎は何が進化した? 矢野監督に通ずる「自分が打ったことよりも」の精神
text by
豊島和男Kazuo Toyoshima
photograph byKYODO
posted2021/07/27 11:02
ホームランを放ち、「U2」ポーズでベンチに戻る梅野隆太郎。今季は正捕手として82試合で先発マスクをかぶる
今回の梅野の珍しい言動とは異なるものの、矢野監督自身も現役時代に似た態度を取っていた。打撃で勝利に貢献しながらも、試合の内容次第では取材の場で笑顔を一切見せなかったことが何度もあったのだ。
「オレがのんきに笑いながら取材を受けている姿を、もし打たれた投手が通りかかって見たら、どう思う。負けた試合ならなおさらだよ。それだけで投手との信頼はなくなるよ」
試合後も正捕手を演じていた。野村氏が矢野監督に多くのことを求めたように、守りの要である梅野には多くのことを求めている。それだけに指揮官はプレー以外の成長を求めていたのかもしれない。
首位を堅持した前半戦の起用が物語るように、梅野は着実に監督の分身に近づきつつある。リーグ優勝を果たした03年当時の星野仙一監督も、05年の岡田彰布監督も、正捕手の矢野燿大には全幅の信頼を置いていた。
「優勝チームに名捕手あり!」
野村氏が残した道標通りに16年ぶりとなるリーグ優勝の可能性が十分にある今季、梅野も現指揮官と同じ道を歩もうとしている。
奇しくも、北京五輪に出場した矢野監督と同様に、梅野は東京五輪で侍ジャパンとして日の丸も背負う。不動の正捕手を目指す入団8年目の30歳は世界の舞台を経て、さらに成長して戻って来るに違いない。関西の人々もそれを待ち望んでいる。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。