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競泳・大橋悠依が“40人中40位”の日本選手権を越えて金メダリストになるまで 「それが自分が水泳をやっているすべて」

posted2021/07/26 06:01

 
競泳・大橋悠依が“40人中40位”の日本選手権を越えて金メダリストになるまで 「それが自分が水泳をやっているすべて」<Number Web> photograph by Getty Images

25日に行われた400m個人メドレー決勝で金メダルを勝ちとった大橋悠依。挫折の多い競技生活の末に世界の頂点に立った

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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 会心のレースだった。

 400m個人メドレー決勝に出場し金メダルを獲得した大橋悠依の泳ぎは、そのひとことに尽きた。

 前日の予選を3位で通過した大橋は3レーン。

 出だしのバタフライは予選より0秒24遅いタイムと抑え気味に入る。続く背泳ぎで2位に上がり、迎えた平泳ぎが勝因となった。ここで加速し、自身の持つ日本記録を樹立したときより2秒近く速いタイムで泳ぐ。平泳ぎはその得手不得手で差がつきやすいだけに、ここで2位以下に大きなリードを得た。

 ターンして迎えた最後の自由形も、その入りから積極的な泳ぎを見せて、今シーズンのベストのタイムを記録する。追い上げを許さず、1着でタッチした。

 初めてのオリンピック出場であった。それを思わせない堂々たる泳ぎだった。

「自分がオリンピックチャンピオンになったんだとうれしさがある一方、正直まだ信じられない気持ちがいっぱいです」

コーチである平井伯昌氏の存在の大きさ

 会心のレースからすると意外なことに、今シーズンは苦しい時間を過ごしてきた。昨年末の日本選手権を体調不良で欠場し、五輪代表選考のかかった今春の日本選手権は痛み止めを飲みながらの出場となった。

 その後のジャパンオープンでは立て直したものの、6月、長野での合宿中に五輪前最後の試合として出たレースでも苦しい状況が変わることはなかった。

 気持ちは途切れそうにもなったが、思い悩み、考えた末、大橋は、気持ちを立て直していった。

 いざ大会を迎えてから大きかったのは、指導するコーチである平井伯昌氏の存在だ。もともと大一番でライバルとなるであろう選手の泳ぎを分析してペース配分などの戦略を立て、選手を観察して落ち着かせる術に長けている。有名なのは2008年北京五輪100m平泳ぎ決勝を前に、絶好調のライバルの姿と、自身の泳ぎに迷いが生じていた北島康介にかけた言葉だ。「大きく泳げ」の言葉で吹っ切れた北島は集中力の研ぎ澄まされた泳ぎで金メダルを獲得している。

【次ページ】 「最初の200を速く入ろうとしても、エネルギーを使うだけ」

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