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「今のプロ野球は1、2番タイプの野手ばかりで…」プロ野球スカウトのリアル評価 今秋ドラフト候補《7人の社会人野手》
posted2021/07/24 17:05
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Sankei Shimbun
【野手編1】「24歳やったら獲れるのになぁ」NTT東日本・向山基生外野手(25歳)
「ええ選手やけど、外野手やし、とんでもなく足が速いわけでなし、とんでもなく肩が強いわけでもなし、せっかく大きい会社で働いとるんやから、まあまあ、そっとしとこうかと、そんな感じやったと思いますよ、どこの球団も。それで去年見送って、今年見たら、また良くなってる……ほんなら行こかとも思うけど、25でしょ。24でこれやったら獲れるのになぁ……って、そういうことが、何度かありますなぁ」
オープニングでいきなり長くなったが、これ、あるスカウトのNTT東日本・向山基生外野手(25歳・184cm82kg・右右・法政大)についての「嘆き」である。
社会人野球の名選手(熊谷組)を父親に持ち、1年目の一昨年からリードオフマンやクリーンアップで奮戦。走・攻・守、高いレベルで備わったユニフォーム姿のシュッとしたスター性十分の外野手である。
社会人野球の24歳と25歳。たった1歳違いでも、プロではその差がとても大きいと言う。
社会人の24歳は、プロ1年目が25歳。たとえば同い年で高校からプロ入りした選手は8年目で、ファームにもまだ何人かいるが、1年目が26歳になると、もう淘汰されていて、同い年の選手はほとんどが一軍クラス。つまり、25歳の社会人選手はいきなり一軍の戦力として働けるのかどうか……そんなシビアな目で選別しなければならないという。
別のスカウトだと、「向山評」はこうなる。
「今の向山なら、十分いけると思いますよ。今日の内容だって、立派なもんでしょ。足元のツーシーム空振りして、インコース意識させられながら、外のカーブおっつけてタイムリーのセンター前。次が、ファールになったけど絶妙の一塁線スクイズで、仕上げが左中間のいちばん深い所に放り込んで。新人投手の代わりばなでしょ、カウント球待ち構えてガッツーン。実戦の中でこれだけ機能できれば……ね。肩も足も使えるし、右打ちでこれだけ揃ってる選手、なかなかいないですよ」
ちょっと違う角度からの、こんな見方も興味深い。