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誰もが騙された“天才”小野伸二のパスに反応できる男…レッズ一筋・平川忠亮、名スカウトがメモに残した評価とは【7.22引退試合】
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byJ.LEAGUE
posted2021/07/22 06:00
2018年シーズン限りで現役引退。セレモニーでは多くのレッズファンの目の前で何度も宙を舞った
それから1年後だった。
2001年の夏に小野はオランダのフェイエノールトへ移籍。大学4年生の平川は大きな夢を追う盟友の旅立ちを見送るほかなかったが、すれ違ったまま終わらなかったのも運命か。2006年、小野が古巣に復帰。そして、大学時代から待ちわびたパスを受ける喜びを噛み締めながら、クラブ初のリーグ優勝を経験した。その翌年にはACLも初制覇。
2人が浦和で過ごしたのは、この2シーズンのみだったが、クラブの黄金期を築き、濃密な時間を過ごしたのは間違いないだろう。
◇◇◇
平川は小野が橋渡ししてくれた浦和でプロキャリアを全うし、18年限りでスパイクを脱いだ。17シーズンにわたってJ1でプレーし、336試合に出場。クラブ歴代4位の出場記録を誇るレジェンドとなり、引退試合まで用意された。
7月22日、プロデビュー(02年4月30日、ナビスコカップ・鹿島アントラーズ戦)を飾った思い入れのある浦和駒場スタジアムでリーグ、ACLを制覇したメンバーを中心にチームを構成し、現役の浦和レッズに立ち向かう。もちろん、盟友の名前もある。
「伸二がボールを持ったときは、どこを向いていても、パスが出てくるかもしれないと思って準備しておきます。高校時代、現役時代もそうでした。昔のようにスピードではカバーできないので、遅れないように反応したいです。献身的に90分間、走り切るところを見せたいと思います」
現在はトップチームのコーチとしてピッチに立つが、練習前後に時間をつくり、地道に有酸素運動と筋力トレーニングを続けてきた。体重は現役時代よりも絞り込み、すでに70kgを切っている。長谷部誠らを発掘した名物スカウトが惚れ込んだ真面目な一面は、42歳になっても変わっていないようだ。
少しばかりスピードは落ちているかもしれないが、小野の意表を突くアウトサイドキックのスルーパスに右サイドを駆け上がる平川の姿を見れば、感慨を覚えないわけがない。四半世紀前、清商ホットラインに衝撃を受けた元スカウトも、多くのファン・サポーターと同様に当日のオンライン配信を楽しみにしている。
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