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誰もが騙された“天才”小野伸二のパスに反応できる男…レッズ一筋・平川忠亮、名スカウトがメモに残した評価とは【7.22引退試合】
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byJ.LEAGUE
posted2021/07/22 06:00
2018年シーズン限りで現役引退。セレモニーでは多くのレッズファンの目の前で何度も宙を舞った
1997年、浦和は小野の獲得に成功したとき、実は高校3年生の平川にも少し遅れてオファーを出していた。筑波大学への推薦が決まっていることを知らず、清水商の大滝雅良監督に話を持っていくと、頭を下げられた。スカウトから報告を受けた強化責任者の横山謙三氏は事情を理解し、致し方ないという結論を下した。
平川本人に話を伝えることはしなかったが、あきらめたわけではない。このとき、強化部では大学での4年間をじっくり見ていくことを確認していた。
浦和のスカウトは筑波大の試合には何度も足を運び、順調に成長していく姿を見守っていたが、ある日、話が急に進展することに。平川と頻繁に連絡を取り合っていた親友の小野からいきなり話を切り出されたのだ。
「平川が『レッズに来たい』と言っています。見てもらえませんか。取ってほしいんです」
獲得リストの上位に入っていたものの、即答できるような話ではない。強化部の方針を知らない小野は間髪入れずに、もうひと押ししてきた。
「とりあえず、一度平川を交えて、3人で話をしましょう」
南浦和の鰻屋で
小野はすぐさまセッティングし、贔屓にしているという南浦和にある鰻屋の座敷に案内された。落ち着いた老舗で、顔を合わせてからは話がトントン拍子に進んだ。その場で大学3年生だった平川の思いを確認し、獲得に動く意思を初めて直接本人に伝えた。
「レッズとしては高校生のときから追っていた選手でしたからね。オファーを伝えたのが、3年後になっただけです。平川は伸二とまた一緒にプレーしたかったんだと思います。その思いはひしひしと伝わってきました」