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松井秀喜「なんであんなに飛ぶのか不思議」…大谷翔平とAロッドに共通する“普通とは違う”ホームラン量産のポイントとは
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byGetty Images
posted2021/07/09 17:04
7月9日現在、32本のホームランを放ち、メジャーリーグ本塁打王争いで独走する大谷翔平
Aロッドはこれまでのホームランバッターとは異質だった
それが松井さんの描いたホームランバッターの打撃だったのである。
ところがそんな常識を覆したのが、04年にヤンキースに移籍してきたAロッドだった。
すでにこの頃のAロッドはシーズン40本塁打以上を6度記録し、そのうち2回は50本塁打以上をマーク。02年には57本塁打と60本の大台に手をかける長距離打者だった。
しかし松井さんがキャンプで観たAロッドのスイングは、これまでのホームランバッターのものとは異質なものだったのである。
ボンズやジアンビのような圧倒的なスイングスピードの速さを感じないのに、特にセンターから逆方向への打球が驚くほど飛ぶ。
「実際にはそれなりにスイングスピードも速いんだけど、なんかボワーンと振っているように見えるのに、ボールにバットが当たった後の前(フォロースルー)が大きくて『エッ!』っていうくらいにボールが飛んでいくんだよね」
もちろんそれも技術だ。ただスイングスピードを上げるとかパワーアップするとか研鑽を重ねて得られたものではなく、その打者しか持ち得ない天性の飛ばす感覚のようなものだった。
それを松井さんはAロッドの打撃に感じていたのである。
大谷翔平との共通点
大谷も同じだった。
今季、大谷が量産している本塁打を見ていると、32号に象徴されるようなライナー性の打球の多さがある。ただ、日本時代からメジャーに渡った直後の大谷には、驚嘆するようなスイングスピードの速さを感じなかった。そしてその割りにボールの絶対飛距離が出て、特にセンターから逆方向への打球が驚くほど伸びるのが特徴だった。