失速した新谷仁美を奮い立たせた“廣中璃梨佳、田中希実らの存在”「途中で諦めることがどれほど失礼なことか」

　日本選手権、女子5000m決勝、終わってみれば廣中璃梨佳が優勝、2位が新谷仁美、3位が田中希実と、この種目のトップ選手が上位を占めた。

　この結果、すでに5000mの東京五輪出場内定を得ていた田中に加え、東京五輪参加標準記録（15分10秒）を超えていた廣中と新谷も5000mでの東京五輪出場を決めた。廣中と新谷は、10000mでの東京五輪出場を決めており、これで2種目になる。

　レースは、大きな波乱がなく、淡々と進行した。

3キロ付近から廣中が前へ　

　スタートから外国人選手が引っ張る形で進行し、最初の1キロは3分02秒。2キロは6分02秒、3キロは9分04秒で、参加標準記録を越えるペースで展開していた。

　3キロを過ぎてからレースに動きが出た。

　廣中が前に出て、それを萩谷楓と新谷が追った。田中は少しうしろに離れたポジションで前線を窺っていた。このレースの35分前に800m決勝を走っており、当然疲れもあっただろうが得意の5000mで負けたくないという思いも強かったのだろう。いつものように飛び出すスタイルではないが、後半の爆発を感じさせるレース展開を見せていた。

3キロ付近で廣中（9番）が先頭に出て、積極的なレースを展開していく　©Getty Images

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　廣中は、田中とは異なり、積極的なレースプランを見せた。それには理由があった。

「昨年12月の日本選手権の時（5000m）は、自分の中で最初から行くという勇気がなくて、誰かのうしろについて2000mから自分の走りとするというちょっと消極的なレースでした」

　そのレースでは、田中に競り負けた。

　5000mを「本命種目」としていた廣中にとって負けたことはもちろん、東京五輪内定を逃したことは大きかった。

　このままでは世界に通用しない。今年に入って自ら積極的に行くことに決めた。自らのレーススタイルを見詰め直したのだ。

「積極的に行けるようになったのは……」

　それを体現したのが今年5月の日本選手権の10000mだ。2000m付近でペースが遅いと感じた廣中は前に出て、積極的にレースを引っ張った。8000mを過ぎて、残り2000mから猛烈なラストスパートを見せ、圧巻の走りで優勝。参加標準記録を突破し、10000mでの東京五輪出場を決めた。

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