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米100万人が熱狂 “モンスター”井上尚弥「ドネアとカシメロ、どっちと戦う?」「日本開催はあり得るのか?」
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2021/06/28 17:04
6月19日、ラスベガスで行われたWBA、IBF世界バンタム級タイトル戦は、王者・井上尚弥(大橋)が挑戦者マイケル・ダスマリナス(フィリピン)に3回TKO勝利した
付け加えると、井上対ダスマリナス戦はESPN+で動画配信もされており、その視聴者は約40万件だったという情報もある。総合すると、日本のモンスターの“2度目のベガスお披露目ファイト”をアメリカでも100万人以上の人が見たことは間違いなさそうだ。
こうしてリング内外で優れた成果を叩き出した後で、気になるのは今後の井上がどんな路線を進むかというところになってくる。
「ドネアvsカシメロ」がついに実現
周囲、本人ともに、期待はやはりバンタム級統一戦路線。それに関し、井上対ダスマリナス戦と同日に大きな動きがあった。WBC同級王者になったばかりのドネアが8月14日(同15日)、WBO同級王者のジョンリール・カシメロ(フィリピン)と統一戦を行うことが伝えられ、主役の2人もその事実を認めたのだ。
「(8月14日に予定されていたカシメロ対ギジェルモ・リゴンドー戦が)行われるかどうかはわからないとだけ言っておきます。ドネアが2つのベルトを持つ統一王者になり、同じく2団体統一王者の井上とリマッチを行うとすれば、これはとてつもないファイトになりますよね。そのためにも今後、私にはやらなければいけないことがあるのです」
筆者は井上の試合前、6月14日に行ったインタビューでドネアのプロモーターであるリチャード・シェイファーからそう聞いており、ドネア対カシメロ戦が実現に動いていることは察しがついていた。ただ、それからわずか5日のうちに合意に達するとは思わなかったというのが正直なところ。
ファイトマネーが比較的安価な軽量級では重要試合がまとめ易いこと、バンタム級の多くの主要メンバーが統一戦を望んでいることなどから、WBAレギュラー王座という微妙なタイトルを保持するリゴンドーがはじき出された結果となったのだろう( 日本のファンの間では「リゴンドーが気の毒」という意見が多かったが、現状、タイトル争いよりも金銭的恩恵を望むキューバの大ベテランには別の相手との代替試合でも好報酬が支払われることは記しておきたい)。
この試合がまとまったことで、バンタム級の4団体統一戦路線はよりクリアになった感がある。ドネアとカシメロが“準決勝”を行い、勝者が井上との決戦に駒を進めるというシナリオがはっきりと見えてきたのだ。
現在のドネア、カシメロはともにアル・ヘイモンと関係が深く、ヘイモン率いるPBCと井上を抱えるトップランク/ESPNはライバル関係にある点が交渉時の不安材料になる。それでもこの2人はこれまでも階級最強の評価を得る井上と対戦したいという希望を明言してきた。バンタム級戦線に関わっている関係者も、総じて交渉に楽観的。早ければ年内、遅くとも来年春~夏ごろまでに決勝戦が挙行され、バンタム級の4団体王者が生まれる可能性が高そうではある。