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中谷正義はロマチェンコにどう敗れたか “右目が腫れていかにも苦しかった”試合にも大きな価値があったワケ
posted2021/06/28 17:03
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Naoki Fukuda
注目のライト級12回戦が26日(日本時間27日)米ラスベガスで行われ、WBO同級5位にランクされる中谷正義(帝拳)が元同級3冠王者のワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)に9回1分48秒TKO負け。金星獲得はならなかった。
元東洋太平洋王者の中谷がライト級という世界で最も層の厚い階級で、パウンド・フォー・パウンド・ランキング元1位のロマチェンコと対戦する。日本の中量級ボクシング史において特筆に値するチャレンジは結果的に大願成就せず幕を閉じることになった。まずは試合を振り返ってみたい。
ロマチェンコ「カウンターを狙う作戦だった」
先制したのはロマチェンコだった。中谷は身長12センチ差という体格をいかし、ジャブを盛んに打っていったが、ロマチェンコは「カウンターを狙う作戦だった」と試合後に語っていたように、無理に懐に入ろうとせず、中谷の打ち終わりに左ストレートを合わせて試合を組み立てようとした。初回、ロマチェンコの思惑通り最短距離を射抜くシャープな左がパンッと中谷の顔面を跳ね上げる。一撃でノックダウンを奪うようなパンチではないが、これに中谷は最後まで苦しめられることになった。
もちろんアメリカ3戦目のサムライもロマチェンコを攻略しようと試みた。射程の長いジャブで牽制しながら、ロマチェンコが入ってきたところに右を合わせる。ロマチェンコが得意とするサイドにまわる動きにも懸命に対応した。しかし、ラウンドごとに見栄えのいいパンチを数発もらってしまい、ポイント獲得にはいたらない。
それでも4回、ウクライナ人の動きに慣れてきたのだろう。距離を詰めてボディブローを打ちこみ、悪い流れを止めにかかった。5回も同じように攻めたが、ラウンド終盤にロマチェンコがクリンチを振りほどくようにして左、右とパンチを浴びせると、中谷がキャンバスに転がった。グローブを振ってスリップを主張したものの裁定はダウンだった。