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EURO絶好調のイタリアに“伝説のペスカーラ”(42試合90得点)を見た…ゼーマン命名「マジコ・トリオ」が躍動 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2021/06/26 17:01

EURO絶好調のイタリアに“伝説のペスカーラ”(42試合90得点)を見た…ゼーマン命名「マジコ・トリオ」が躍動<Number Web> photograph by Getty Images

3連勝でグループ突破を決めたアズーリ。快進撃の裏には、かつて同じクラブでプレーした3人の存在がある

 15歳でプロデビューして10番を背負った神童は、ゼーマンによってトップ下から戦術の鍵となる中盤の底にコンバートされ、真の“ピルロ2世”として才能を開花させていた。

 公称は165cmだが、実際の印象はもっと小さい。透き通ったブルーの瞳以外は一休さんみたいな風貌なのに、リーグで最も怖れられた“超攻撃的レジスタ”だった。

 視野の広さ、緩急と長短自在のパスワークで、年齢も経験もずっと上の相手を翻弄した。若いから疲れ知らずで、とにかく相手の隙を見つけては前線の2人にエグいキラーパスを通すことが面白くてたまらない。ベッラッティのコメントが取材メモに記してある。

「2人とプレーするのが楽しいんだ」

相手のMFが心臓発作で倒れ、帰らぬ人に

 ペスカーラは毎試合、攻め達磨と化した。決定機は2度、3度と続くことが当たり前で、メモを取る手が追いつかなかった。

 イタリア2部というカテゴリーは若手の登竜門だが、渋くて老獪で頑強な半ベテラン選手たちが居並ぶ魔窟でもある。その難敵たちを20歳そこそこの粗削りな彼らが次々になぎ倒していくのだ。痛快だった。

 シーズン終盤の試合のあと、インモービレが半分は冗談っぽく、半分は真顔で語っていたことがある。

「監督から『(インシーニェとベッラッティの)2人と一緒にプレーしているんだ。30得点できなかったらおまえのシーズンは失敗だと思え』って言われてるんだ。自分でもそう思う」

 ゼーマンのチームと言えば代名詞の4-3-3、東欧仕込みのハードトレーニング、厳しい規律で知られる。シーズン序盤は一気に飛ばして、勝点を稼ぎ期待をもたせるも、後半戦には対策を立てられて息切れ……というのが良くも悪くも定石だ。

 2012年の春も、ペスカーラは優勝戦線に踏みとどまれるか否かの瀬戸際に立たされた。

 3月にGKコーチを心筋梗塞で亡くした彼らは失意の3連敗。さらにリボルノをホームに招いた4月14日の第35節で悲劇が起きてしまう。前半31分、相手のMFピエルマリオ・モロジーニが心臓発作で倒れ、そのまま帰らぬ人となったのだ。

 グラウンド脇の救急車用アクセス入口を塞いでいたのは、よりにもよって警察車両で、鍵の持ち主は近くにおらず、救命作業が遅れた。ピッチに伏したままのモロジーニを救うべく、両チームの選手たちは誰の指示を待つこともなくグラウンドを飛び出した。

 ベッラッティは救急車から運び出した担架を、あらん限りの力で押して走った。泣きながら走る姿が翌日の地元紙に掲載されている。

【次ページ】 「これはもはや火星のサッカーです!」

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