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EURO絶好調のイタリアに“伝説のペスカーラ”(42試合90得点)を見た…ゼーマン命名「マジコ・トリオ」が躍動
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2021/06/26 17:01
3連勝でグループ突破を決めたアズーリ。快進撃の裏には、かつて同じクラブでプレーした3人の存在がある
結局、2-0の完勝を収めたその日は、いつも口やかましい、けれど選手たちが敬愛するゼーマンの65歳の誕生日だった。
ベッラッティら教え子たちは、白星という最高のプレゼントを贈り、残る試合も優勝へ突き進んだ。「ゼーマン率いるチームは魅力的だが完走できない」というジンクスを打ち破り、彼らは歴史に勝者として名を刻んだ。
朴念仁の師匠が定めた選手の門限は午後6時。「監督、これじゃ(恋人と)映画ひとつ観に行けません」と直談判して門限延長を勝ち取ったインモービレたちの心底嬉しそうな顔をよく覚えている。
イタリア代表のなかには私のペスカーラが息づいている
優勝したあと、インモービレはジェノアへ、インシーニェは保有元のナポリへ戻った。ベッラッティはセリエAで戦うことなく、パリSGへ旅立った。
あれから9年の時が過ぎた。
古希を越えたゼーマンは、EURO2020をTV観戦しながらかつての教え子たちの活躍ぶりに目を細める。伊紙『ガゼッタ・デッロ・スポルト』にコメントを寄せた。
「イタリア代表のなかには、私のペスカーラが息づいている。チロ(・インモービレ)とロレンツォ(・インシーニェ)のコンビが決めたトルコ戦の3点目、脳裏にペスカーラ時代の思い出がよみがえったよ。彼らは目を閉じていても互いの居場所がわかる。オフ・ザ・ボールの動きは、私が教え込んだものだ。タテへの速い展開を可能にするマルコ(・ベッラッティ)の戦列復帰は、マンチーニ監督にとって強力なカードになるだろう。今回イタリアはかなりいいところまで勝ち上がれると、私は確信している」
EUROの開幕前、寂しいことにペスカーラのセリエC(3部)への降格が決まった。
それでも、町の人たちは現代表チームのなかに、伝説のチームを見出すことができる。攻守がよく練られ、勢いと根性を兼ね備えた、伝説のペスカーラを。
町の彼らは名物の羊肉の串焼き「アロスティチーニ」を頬張りながら、TVの前に集い「マメリ賛歌」を大合唱するだろう。
アズーリは、ロンドンでのベスト16ラウンドへ勇躍乗り込む。機運は上々だ。