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歴代の“守備職人”が徹底解説! バレー男子代表リベロに山本智大が選ばれた理由とは?「今の日本には石川と高橋がいる」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byTakahisa Hirano
posted2021/06/27 17:02
東京五輪メンバーに選出された山本智大。選ばれた理由を探ると、日本がやろうとするバレーも見えてくる
5月28日から行われたネーションズリーグの成績を見てもわかるように、石川は総得点、サーブレシーブの受数、返球率のすべてでチーム最多を記録している。当然ながら相手からすれば要注意選手であり、石川が万全な状態で攻撃参加できないよう、どのポジションにいてもサーブを狙ってくるだろう。
しかも、時速120~130キロを超えるようなジャンプサーブもあれば、コート中央に落として体勢を崩させるようなショートサーブ、選手の間を狙った左右に動かすサーブなど種類もシチュエーションもさまざま。
石川を思惑通りに崩されれば、日本は不利な状況を強いられる。いかに石川のストレスを軽減させ、よりよい状況で攻撃参加させるか。その環境を整えるのがリベロの役割だと古賀氏は言う。
「たとえば石川選手が前衛レフトで、リベロが真ん中にいるローテーションならば、相手がサーブを打った直後にリベロともう1人の(サーブレシーブに入る)アウトサイドヒッターが石川選手のほうに半歩寄る。相手は打つ瞬間までは石川選手の位置を確認して狙いを定めているので、打った瞬間にリベロがカバーして石川選手が守る範囲が減れば、それだけでも相手の策を上回ることになります。
リベロがレシーブすればそれだけ石川選手は速く攻撃態勢に入れるし、もしそのまま石川選手がレシーブしたとしても範囲が限定される分体勢を崩される確率も減る。ジャンプサーブならばオポジットを(サーブレシーブに)入れるとか、少しの駆け引きをするだけで、石川選手のストレスを減らして得点機会をより増やすことも可能になる。その環境を整えるのがリベロの仕事です」
サーブレシーブでキープレーヤーの負担をいかに減らすかがカギになる。
小川ではなく、山本が選ばれた理由
なるほど、ならば山本智大が東京五輪に出場するリベロとして選出されたのは、サーブレシーブが優れているからなのか。実は違う。
むしろサーブレシーブだけに特化すれば、昨季のVリーグでサーブレシーブ賞を受賞し、ネーションズリーグでもリベロのポジションを最後まで争った小川智大のほうが長けている。
さらに言うならば、山本にはもう1つ大きな課題がある。
サーブで攻めることと同様にリードブロックが主流である現代バレーでは、相手ブロッカーの的を絞らせないために攻撃枚数を増やすことは不可欠。そのためにセッターが1本目にレシーブした後は、リベロがトスを上げるセカンドセッターの役割も担う。オーバーセットが得意で、相手ブロッカーの裏をかくような攻撃展開ができる小川に対し、それを不得手とする山本はアンダーセットがメインになる。
そのため、スパイクを打てることに変わりはなくとも、上か下か、ボールの出る位置の違いで0コンマ数秒、わずかにタイムロスが生じる。それが世界を相手にするとブロックポイントを献上することにつながる。