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歴代の“守備職人”が徹底解説! バレー男子代表リベロに山本智大が選ばれた理由とは?「今の日本には石川と高橋がいる」 

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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photograph byTakahisa Hirano

posted2021/06/27 17:02

歴代の“守備職人”が徹底解説! バレー男子代表リベロに山本智大が選ばれた理由とは?「今の日本には石川と高橋がいる」<Number Web> photograph by Takahisa Hirano

東京五輪メンバーに選出された山本智大。選ばれた理由を探ると、日本がやろうとするバレーも見えてくる

 東京五輪に出場する山本やネーションズリーグに出場した小川のみならず、海外で活躍を重ねた古賀太一郎や本間隆太、井手智など日本には守備の技術だけでなく、統率力やリーダーシップにおいても優れたリベロがまだまだいる。

 そんな多くの選手の中で、ただ1人コートに立つリベロは全員の代表である。

 2009年から16年まで日本代表のリベロとして活躍し、ワールドカップや五輪最終予選で何度も世界と対峙した永野健も、その責任を背負ってきた。そして目標に届かずに敗れる悔しさも、嫌というほど味わってきた。

「オリンピックの出場権がかかる大会では、世界は目の色が変わります。一瞬たりとも気を抜くことはないし、サービスエースを取った、スパイクを決めた、その1本、1本の威圧感がとにかくすごい。国と国のぶつかり合いで、プライドをかけて、とにかくこの1本で潰しに来る、そういう戦いです。うまくいかなくなれば心が折れてしまいそうになる選手もいるかもしれない。

 でもそういう時に何ができるか。いい時は何もしなくてもうまく回るからこそ、苦しい時に自分を犠牲にしてでも、チームのプラスになる影響を与えられるか。それもリベロの役割だと僕は思います」

 強烈なビッグサーバーに試合序盤から連続得点を喫し、0-5、0-6と得点が開けば表情も沈む。だが、そこで諦めれば終わり。

 あえて届かないボールに飛び込む姿や、身体ではなく顔面にボールが上がろうとブロックされたボールを必死で上げる。戦術も、戦略も飛び越えて、ひるまぬ心を持ち続けることもリベロにとっては重要だと永野は言う。

「(パナソニックのチームメイトでポーランド代表主将のミハウ・)クビアクも僕らに『欲しいのはオリンピックの金メダルだけだ』とずっと言い続けて来たぐらい、オリンピックって世界のトップ12カ国、しかもそこのトップ12名しか出られない。すごい大会ですよ。

 1本、1点、すべて真剣勝負の中で『自分のところに(ボールが)来るな』と思えば負け。余計なことは考えず、苦しい時ほど心を強く、ここまでやってきたことを出し切ってほしいですよね。最後まで諦めずに、仲間を1人にせず、声をかけ合いながら向かって行く。派手な必要なんてない。でも、戦う。そういう姿勢を山本選手に見せてほしいです」

 引き立て、盛り立てる最強の仕事人。そして、リベロを見ればチームの戦術が見えてくる。

 たとえ主役にならずとも。やはりリベロは奥深い。

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