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歴代の“守備職人”が徹底解説! バレー男子代表リベロに山本智大が選ばれた理由とは?「今の日本には石川と高橋がいる」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byTakahisa Hirano
posted2021/06/27 17:02
東京五輪メンバーに選出された山本智大。選ばれた理由を探ると、日本がやろうとするバレーも見えてくる
では、なぜ山本が選ばれたのか。実はそこに注目することで、男子バレー日本代表が取り組む戦術のポイントが見える、と古賀氏は言う。
「サーブレシーブが苦手なアウトサイドヒッター同士が対角を組むとすれば、当然リベロがサーブレシーブの中心になるので、それに長けたリベロを選ぶ。でも今の日本はどちらもサーブレシーブができる石川選手と高橋(藍)選手が組んでいます。つまり、サーブレシーブでリベロが中心になる必要がない。
むしろ相手の攻撃を拾うディグ(スパイクレシーブ)の力がある山本選手が入ることで、最もボールが飛んでくる確率が高い位置にリベロが入ってレシーブし、つないだボールをポイントゲッターの石川選手、西田選手が決める。そのほうが勝機を得るために適していると判断されたはずです。
ディグにおいてリベロがやるべき仕事はコート内の交通整備。ここは誰がブロックに跳ぶ、このコースは自分が拾う、ここはあなたが拾ってね、と指示を出し、それぞれの役割を明確にするのもリベロの役割です。その点で見れば小川選手は動きすぎる傾向があり、前に突っ込んで裏をかかれたり、本来拾えるボールも拾えないことがある。対して、山本選手は読みがいい。
おそらく自分でも『サーブレシーブよりディグが得意』と自信を持っていると思うので、いかに攻撃しやすい状況をつくれたか。苦手なサーブレシーブでも、むしろ何本返したかという本数よりも、自分がどれだけの本数を取って周りを活かすことができたか。そこに目が向くようになれば、もっとよくなる。それこそが、リベロの果たす役割であるはずです」
隣の選手をフォローしようとレシーブ範囲を広げていたために、その裏をかかれたサーブが取れずにポイントを取られる。
ミドルブロッカーやセッターが前に出る動線と重なり、助走コースを邪魔しないようにと動いた結果、簡単そうに見えるサーブが取れなければため息が漏れる。
レシーブの調子が上がらなくてもスパイクやブロック、サーブで挽回できる他のポジションと異なり、リベロは評価基準が見えにくく、成功よりも失敗が目立つ損なポジションだ。
だが、だからこそ隠れた仕事人が果たす役割は大きい。