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日曜朝に“喝”を入れがちな張本勲だけど… イチローが「ハリー」と安打製造機に親しみ、敬意を込めたワケ【81歳に】
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byKyodo News
posted2021/06/19 17:02
2013年、当時日本ハムの大谷翔平と手を合わせる張本勲。野球が大好きな1人の名選手なのだ
“メジャーをメッタ打ち”より心に残ったこと
地球の反対側へ長い旅路で到着した東映の選手たち。コンディションが整わない中で打棒を振るったのは張本だった。メジャーリーガー相手にもまったく怯むことなく“メッタ打ち”。現地ブラジルに残る記録によると、打率.568の超ハイアベレージを残したのだという。
そんな張本だが、野球の試合以上に心を打たれる出来事があったようだ。現地ではブラジルに移住した日本人や日系人の家へと招待され、宿泊したそうだが、そこで暮らす人々の生活は非常に質素だったのだという。
とはいえ張本自身、手に大やけどを負い、広島に落とされた原爆の被爆者となった苛烈な幼少期を過ごしてきた。ヤンチャな学生生活を経てプロへとたどり着いたわけだが、そんな若き張本にとってもブラジルに住む人々の生活は“自分が恵まれている”との思いを強くさせられたものだった。
ブラジル遠征の翌年から、張本は4年連続首位打者を獲得した。ブラジルでの経験が、彼の心をさらに強くしたことは間違いない。
<名言3>
立ち小便した時のヒザが一番いいわけですよ。
(張本勲/Number4号 1980年5月20日発売)
◇解説◇
前人未到の3000安打達成を目前に控えたタイミングで、取材に応じてくれた張本が答えてくれたバッティング感覚の一言である。文字を見ただけでは……昭和のご時世とはいえ「何を言っているんだ」と思う人も多いだろう。ただ、この言葉に続く表現は、バッティングの真髄をとらえている。
「力抜いて、フワーッと揺れるような、いわゆる柳に風のヒザなんです」
それだけ自然体でバットを構える。それができていたからこそ、通算3085安打の金字塔を成し遂げられたのだろう。