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EUROで「観衆5万5662人」ハンガリーが“満員OKな理由” ワクチン接種率の高さと…【クリロナはプラティニ超え弾】
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2021/06/19 17:01
C・ロナウドのゴールでハンガリーサポーターが沈黙したスタジアム。UEFAの公式記録によると観衆は「5万5662人」だった
ロンドンやアムステルダム、ローマなど8都市がキャパシティーの22%~45%(1万2000人~2万2500人)、サンクトペテルブルクとバクーが同50%(3万4000人)の制限を設けているなか、ブダペストだけはほぼフルハウス(6万1000人)を容認している。なぜそんなことが可能なのか。
シンプルな理由は、首相とサッカーの関係性
もっともシンプルな回答は、ハンガリーの為政者がこの競技を愛しているからだ。加えて、その効力も十分に理解しているに違いない。
同国のオルバーン・ヴィクトル首相は、若かりし頃にプロを目指し、実際にセミプロにまでなった人物だ。驚くことに、4部リーグでプレーしていたその時期は、自身が初めて首相になった頃だという(1998年に35歳で初めて首相に。最高指導者として最初の外遊はフランスW杯決勝だったとも)。英紙『ガーディアン』によると、一度失脚した後、2010年に再び同国トップの座に就くと、現在までに約3100億円もの税金がフットボールの発展に投じられてきたという。
なかでも最大の費用は、EURO2020の会場にもなっているプシュカシュ・アリーナの建築費で、その額およそ710億円。銀のメッシュで覆われた近代的なスタジアムは2019年に開場し、昨年のUEFAスーパーカップの会場に。また今年2、3月に西欧でパンデミックが再び蔓延し、UEFAがチャンピオンズリーグとヨーロッパリーグの代替会場を探していた際には、すみやかに手を挙げ、計6試合を開催した。
国民980万人のうち、530万人がワクチン接種
ただし当時は無観客だったのに、なぜEURO2020では最多で6万人を超えるファンの入場が許されるのか。最大の理由のひとつに、新型コロナウイルスのワクチンの接種率の高さが挙げられる。
英紙『インディペンデント』によると、ハンガリーではおよそ980万人の国民のうち、すでに530万人がワクチンを接種しているという。ここ30年ほどの間にリベラルから極右化したと評されるオルバーン首相は、EUで初めてロシアと中国で開発されたワクチンを導入し、自身も2月に中国はシノファーム製のワクチンを打ったと明かしている。