立ち上がりから140キロ台後半をコンスタントにマークしながら、速球のラインに角度をつけて、低く、低く集めようとする意識がはっきり見てとれる。

　すでに「全国」の常連で、本気で優勝まで狙ってるはずの上武大の1回戦・先発が、そんなに次元の低いピッチャーのはずがなかったのだ。

　130キロ後半の速球でファールを打たせ、勝負！の時は148、9キロに。およそ10キロの球速差をつけて速球を使い分け、110キロ前後の落差抜群のカーブでカウントを作り、ストライク先行のピッチング。左打者の外には145キロ前後でシュートをきめて、速い系で追い込んだら、チェンジアップ、ツーシームでタイミングを外して料理する。

　想定していた投球内容より、ずっとずっときめ細かい。パワー系のピッチングもできるのに、あくまでも「外角低め」を基調にした投球はそのまま高度な「実戦力」につながる。

　昨年の上武大には、実戦力抜群の吉野光樹（現・トヨタ自動車）と荒れ球でも150キロ台連発の佐藤蓮（現・阪神）……2人の好対照な右腕が投手陣の軸になっていたが、その「エッセンス」を両方とも吸収して投げる栄養にしているようだ。

　この試合、投げ合ったのが、ドラフト上位候補として12球団こぞって注目マークの左腕・隅田知一郎（西日本工業大・176cm76kg・左投左打・長崎波佐見高）だ。負けるもんか！の勢い余って「暴走」しないかちょっと心配だったが、それどころか、自分だけのカプセルの中で、自分のペースで投げたいように投げて、1対0の緊迫の9回を投げきってしまった。

　しかも、最終回の4番打者相手にも、ベストボールの外角低め148キロを立て続けにきめて三振を奪う。昨年のあの快腕、剛腕のあとに、今年もこんな逸材が後をしっかり継いでいく。上武大の育成能力に、頭が下がるばかりだ。

（3）仲地礼亜投手（沖縄大3年）

　それでも、いちばん驚いたのは、沖縄大のエース・仲地礼亜（3年・178cm75kg・右投右打・嘉手納高）だ。

　沖縄にこんなピッチャーがいるなんて、知らなかった。

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