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初の開幕投手は「悔しさばかりですね……」DeNA濵口遥大が“高速スライダー”を封印していたワケ
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byJIJI PRESS
posted2021/06/04 11:03
今季、横浜の開幕投手を務めた濵口遥大投手。投球内容が大きく変化したのが4月15日のヤクルト戦(神宮)からだ
「初めて経験した緊張感というか、思うようにセルフコントロールできませんでした……。自分の気持ちを制御できなかったこと、自主トレやキャンプで準備してきたものを発揮できなかったこと、悔しさばかりですね……」
厳しい表情をした濵口だったが、次の瞬間、口調が力強いものに変わった。
「ただ、これは経験しなければわからなかった感情だと思いますし、そこは今後プラスにしていきたい。登板翌日に三浦監督から『シーズンは始まったばかりだし、やり返すチャンスはある』と声を掛けていただき、本当にそうだと思ったし、とにかく前を向いてやっていくしかないって」
行き着いた“高速スライダー”の解禁
そんな濵口の投球内容が大きく変化したのが4月15日のヤクルト戦(神宮)からである。この前の2試合で濵口はまずまずのピッチングをしていたが、投打がかみ合わず連敗を喫していた。「なにかを変えなければいけない」と、危機感を持った濵口が行き着いたのが“高速スライダー”の解禁である。
今季の濵口はストレート、チェンジアップ、フォーク、カーブといったボールを駆使し、上下と奥行きの変化で勝負していたが、結果が出ずどこか頭打ちの感があった。
そこで相談したのがヤクルト戦でマスクをかぶったキャッチャーの嶺井博希だ。
「状態が上がらず苦しいピッチングをしているのもあって、曲がり球があったほうがいいんですかね、といった話をすると嶺井さんは『アクセントとして、ひとつあるだけでも全然ちがうよ』ということだったので“決め球”にするのではなく“見せ球”として使っていくことになりました」
この判断は功を奏し、スライダーを適宜挟み込むことでピッチングは安定し、また他の球種も活きるようになった。