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初の開幕投手は「悔しさばかりですね……」DeNA濵口遥大が“高速スライダー”を封印していたワケ
posted2021/06/04 11:03
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
JIJI PRESS
立場が人を作る――ここ最近の濵口遥大の様子を見て、ふと、そんな言葉が頭をよぎった。
コロナ禍により基本的に選手たちと対面できない状況がつづいているが、リモートではあるものの約1年ぶりにゆっくりと濵口と言葉を交わす機会を得た。久しぶりに接するその表情はどこか凛とし、言葉に厚みが増していた。
「先発投手陣が試合を作ることができず、僕としては責任を感じています……」
交流戦に入ってから改善しつつあるものの、開幕当初から横浜DeNAベイスターズの不振の要因のひとつに挙げられているのが先発陣の不調だ。ここまでただひとりローテーションを守り援護点が少ないなか奮起している濵口ではあるが、なかなか状況は好転しない。
「僕は自分のことだけではなく、チーム単位で、先発投手陣としていい成績を残したいと思っているんです。そういった意味では週に一度の自分の仕事だけではなく、先発陣はもちろんリリーフ陣含め、すべてのピッチャーがいい状況でマウンドに上がれる環境を作っていきたいと考えています。チャンスを得た若いピッチャーに対しても、チーム状況など考えることなく自分の仕事に集中できるように、僕が少しでも彼らの負担を軽減できるような取り組みをしていきたいんです」
元来、責任感が強く真面目な性格の濵口ではあるが、ここまでチームファーストともいえる発言は聞いたことがない。初の開幕投手に選ばれた今季、どうやら勇敢なハートを持つサウスポーは、一皮むけたようだ。
初の開幕投手は「悔しさばかりですね……」
5年目の今季、キャンプから自らアピールすることで開幕投手の座を手に入れた。エース格である今永昇太が昨年左肩の手術を受けリハビリ中で不在のなか、濵口はキャンプからリーダーシップを発揮するように投手陣の先頭に立ち周囲を鼓舞していた。その存在感は三浦大輔新監督のもと頼りがいのあるものに映っていたが、奇しくも開幕投手という初の大舞台では辛酸を舐めることになってしまった。
3月26日の巨人戦(東京ドーム)、濵口は、被安打4ながら5つのフォアボールを与え、3回6失点でマウンドを降りている。初回から1、2番をフォアボールで出し3失点するなど、制球は乱れゲームを作ることができなかった。ようやく勝ち取った檜舞台ではあったが、濵口は独特の雰囲気に抗えず飲み込まれてしまった。