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引退どころかカタールW杯出場へ意欲 超人ブッフォン43歳が残した数々の伝説と“あるある”
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2021/06/02 17:00
今季限りでユベントスを退団するブッフォン。様々な話題振りまく43歳のGKはこれからどこへ向かうのか。
「モリはナンバーワンFWだよ!」と日本報道陣にウインク
欧州有数の名門ユベントスとイタリア代表の主将を長く任されたくらいだから、人望は唸るほどある。だが、一個人としてのジャンルイジ・ブッフォンは自由闊達。富も名声も地位もあるが、決して聖人ぶらない。
世界王者として望んだ南アフリカW杯でグループリーグ敗退の恥辱にまみれ、国中から批難に晒されたときも、60年ぶりにW杯出場を逃したロシアW杯予選での歴史的大失態のときも、ブッフォンはすぐに矢面に立ちチームの代表として「申し訳ない」と謝った。
2012年に発覚した国際八百長疑惑の際には、過去に総額1億円以上を公営ギャンブルにつぎ込んだことが発覚。「自分で稼いだ金を好きなように使って何が悪い」と開き直ったが、14年にW不倫が発覚したときは不義を素直に認めた。
2009年2月、世界王者イタリアの守護神ブッフォンはカターニャFW森本貴幸からゴールを決められた。しかし、試合後のミックスゾーンでの彼に悔しがる素振りはなく、むしろ余裕しゃくしゃくで「モリはナンバーワンFWだよ!」と日本報道陣にウインクしながら親指を立ててくれた。
ブッフォンが少年時代を過ごした地元の出身サッカースクールに取材を申し込んだこともある。だが、初老のスクール代表者に「彼は都会のトリノに行って変わってしまった。うちにはもう寄りつかない」と嘆かれて、英雄の負の面を見た気がした。
ブッフォンの言葉は話半分で聞いた方がいい
ブッフォンは、いつ現役を辞めるのか。
今年3月、英紙『ガーディアン』のインタビューで「2023年(6月)限りで辞める。それがリミット。もしかしたら今季限りで辞めるかも」と明言した。
しかし、彼は同じインタビューの中で続けてこうも語っている。サッカー人生に関するブッフォンの言葉は話半分で聞いた方がいい。
「この歳になったら衰えが一気にやってくるというが、俺は信じてない。俺の感覚では、今すぐ一気に自分のパフォーマンスが急に崩れるとは思えないんだ」
「この歳になったら逆に何をやってもいいだろうという気分なんだ。新しい挑戦に挑んで、何も勝ち取れなくても、それでもいいんだ。俺はいつだって旅をしながら挑戦をつづけていきたい。それこそが俺がこの世に生きている証だと思っている。俺の体は、まだ動く。俺には、まだエネルギーが残っている」
だから、再来年になり「もう1年やりたい」と言い出しても、それは“ブッフォンあるある”だから驚かなくていい。