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野球少年だった小野寺太志がバレー歴4年で日本代表へ…“奇跡の2m”が急成長したフィリップ・ブランとの会話とは?
posted2021/05/31 17:00
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Takahisa Hirano
奇跡の40代、50代と聞けば、浮かぶのは美魔女かイケオジか。
以前までの常識ならばあり得なかった存在が出てくれば、もれなくついてくる“奇跡”。日本男子バレーボール界にも、そんな言葉がぴったりな選手がいる。
彼の名は、男子バレー日本代表・小野寺太志(25歳/JTサンダーズ広島)。
学生時代の師は、小野寺をこう評した。
「守備力も高いし、とても器用。2mであれだけバランスに長けた選手はいませんよ」
いわば“奇跡”の2m。いや、正確には2mと1cm。5月28日からイタリア・リミニで開幕するネーションズリーグに出場する17名にも名を連ねるミドルブロッカーで、実績や高さという武器もさることながら、小野寺の長所はレシーブやハイセットなど、細かな守備やつなぎのプレーにある。実に丁寧で、精度も高い。
だが、何でもソツなくこなす器用さが、以前は悩みのタネでもあった。事実、日本代表に選出されたばかりの頃、小野寺自身もこう述べていた。
「コレ、という武器がないんです。いろいろできるようになりたいし、すべてのプレーで一番になりたいけれど、でも“器用貧乏”からなかなか脱けだせないんです」
器用貧乏から奇跡の2mへ。わずか数年で今や日本のミドルブロッカーの柱と呼ぶべき存在に進化を遂げた背景には、2年前のある夜に得た、1つのきっかけがあった。
両親から受け継ぐバレーのDNA
幼少期は野球少年。ただ、身長は周囲より頭1つ飛び抜けていた。
バレーボール選手だった両親のDNAに加え、喉が渇けば牛乳を飲むのが習慣で、食べ物の好き嫌いもない。身長だけでなく横にも大きかった少年時代を振り返り「クリームパンみたいな顔と体形のおデブちゃんだった」と笑う。
身体を絞るべく、両親はスポーツをやらせようと考えた。そうなれば当然、両親共に経験者であるバレーボールを選ぶのかと思いきや、「バレーボールだけは嫌」と猛烈に反対したのが、他ならぬ母だった。